大杉栄、最後の墓前祭 甘粕事件100年、静岡

墓前祭が営まれた大杉栄の墓に献花し、手を合わせる参列者=16日午前、静岡市

 1923年9月1日の関東大震災後の混乱下で、憲兵大尉の甘粕正彦らが無政府主義者大杉栄や、パートナーで作家の伊藤野枝ら3人を殺害した甘粕事件から100年を迎えた16日、大杉の墓がある静岡市葵区で墓前祭が営まれた。「大杉栄らの墓前祭実行委員会」によると、100年の節目を迎え、静岡市内での墓前祭は今年が最後となる。

 大杉のおいの大杉豊さん(84)は、新型コロナウイルス禍の影響で久しぶりに参加した。約50人の参列者を前にあいさつし「権力の横暴を忘れず、大杉栄と伊藤野枝の意志を引き継いでいく」と語った。

 事件では東京憲兵隊大尉の甘粕らが、大杉と伊藤、おいで当時6歳だった橘宗一とともに東京の憲兵司令部に連行し、暴行を加えて殺害した。

 震災直後、社会主義者や朝鮮人が暴動を起こすとの流言が広がり、治安維持を目的に戒厳令が敷かれる中、混乱に乗じて軍などによる虐殺が横行した。

 大杉の遺体は事件翌年の24年、妹夫妻の住む静岡市内の墓地に埋葬された。静岡県内の有志が90年、実行委員会を立ち上げ墓前祭を続けてきた。

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