母を助ける “産後ケア” もっと知って 孤立させず 子育てに自信を!広島

あやかさん(仮名・32歳)
「最近よく笑うようになって、目が見えてきたのかなって」

生まれて間もない命。

渕上沙紀 アナウンサー
「なるほどそういうふうに…大丈夫かな…寝ました」

おむつ替えに授乳に抱っこ。愛しい反面、24時間つきっきりのお世話は大変です。

たから助産院 助産師 北村由貴恵さん
「密着すると安心感があって…縦揺れで、お母さんのストレッチ」

そんなお母さんたちを助ける“産後ケア”。

渕上アナウンサー
「いい音聞こえてます。お料理作っていらっしゃいます」
たから助産院 食事係 林雅未さん
「とにかくママが元気になってくれればと考えながら作っています」

きょうの深掘りニュースDigは、産後ケアの現場を取材しました。

◇ ◇ ◇

小林康秀 キャスター
“産後ケア”…あまり聞き慣れない言葉ですが、渕上沙紀アナウンサーが取材しました。

渕上沙紀 アナウンサー
木下さん、子育てって大変ですね。

コメンテーター 木下ゆーきさん(子育てインフルエンサー)
大変ですね。心身ともに疲れる作業が24時間365日ですからね。

渕上沙紀 アナウンサー
実は私も姪っ子がことし2月に生まれて、かわいいけれどお母さんってこんなに大変なんだって思いました。そこで関心を持ったのが“産後ケア”です。広島県内の産後ケアの利用者は年々増えていて、昨年度は2201人(暫定値/宿泊・日帰り)でしたが、県内で生まれた赤ちゃんの出生数からみると、利用率は12.2%です。“産後ケア”とは何か。なぜお母さんたちに必要なのか、取材しました。

◇ ◇ ◇

渕上沙紀アナウンサー
「こんにちは!よろしくお願いします。お母さんとそして赤ちゃん、双子ちゃんだ。かわいい。今、何ヶ月ですか」

あやかさん(仮名・32歳)
「もうちょっとで2ヶ月になります」

広島市の助産院で赤ちゃんと過ごすあやかさん。

あやかさん(仮名・32歳)
「(Q初めての出産?)いいえ、上に2歳の長女がいて、2人目3人目です。
(Q一気に2人増えたんですね)そうですね、3人姉妹になりました」

産後ケアに取り組むのはたから助産院です。家庭的な雰囲気の中、助産師がお母さんの代わりに赤ちゃんのお世話をしたり、育児相談にのってサポートします。あやかさんは2ヶ月前に双子の女の子を出産しました。出産後、出血が止まらず3日間、輸血が必要でした。

あやかさん
「帝王切開だったので、もちろん傷の痛みもあるので、起き上がるだけで痛い感じで貧血でふらふらしていたのもあったので」

双子の子育ては想像以上に大変でした。実家のサポートや夫のフォローはありましたが、2歳の長女にもまだ手がかかり、寝不足の日々。体力的にも限界を感じ、産後ケアを利用しました。

渕上アナウンサー
「お母さん抱っこしても大丈夫ですか?いいですか。かわいい。メチャクチャいい香りします」

たから助産院 助産師 北村由貴恵さん
「(Q最初来られた時は?)もうすごい疲れた顔で来られたので、お預かりしながら、お母さんにできるだけ休んでもらいました」

核家族化や地域のつながりが弱まる中、母親の子育ての負担は増えていると言われます。孤立して1人で抱え込み「産後うつ」になるケースもあります。

産後ケアは国が少子化対策の1つとして力を入れ始めた制度で、▽「日帰り型」のほか▽助産師などが自宅を訪れる「訪問型」、▽母親が赤ちゃんと一緒に最長7日間泊まり込み24時間、サポートを受けられる「宿泊型」があります。

今回、あやかさんは6日間の「宿泊型」を利用しました。

あやかさん
「(Q産後ケアを受けて良かったことは?)やっぱり夜寝られることですかね。夜ずっと預かっていただけるので2人とも」

たから助産院(助産師)梶岡智佳子 院長
「広島の慣れない土地で育児をしているお母さんとか、サポートはあるけどお母さんのお母さんも不慣れで対応できなくて共倒れになりそうですとサポートを頼む方もいらっしゃいます」

渕上アナウンサー
「あ、眠ったまま着地しました。さすがプロです」

たから助産院では、助産師が1対1で育児指導もしてくれます。

たから助産院(助産師)梶岡智佳子 院長
「お母さんが疲れているからと言って完全に預かって休息だけしてもらいますということではなく、今後の生活に生かしていけるようなサポートができればと思っています」

この日、抱っこのコツを伝授してもらいました。

たから助産院 助産師 北村由貴恵さん
「手と足はまとめます。お尻がはまってくると静かになるので、とりあえず縦揺れをしています。お母さんもやってみましょう。お母さんのストレッチ」

たから助産院 食事係 林雅未さん
「(Q何を作っている?)今はキュウリとワカメとツナのゴマあえを作っています。(Qお母さんの晩ご飯?)そうです」

宿泊中の食事は朝・昼・晩と助産院で提供されます。旬の野菜をメインに使った、彩り豊かな献立です。

たから助産院 食事係 林雅未さん
「すごく実家に帰ってきたような感じで、後ろ振り返ったらお話しできるのもすごく楽しいです」
渕上アナウンサー
「確かに今、後ろ振り返ったらお母さんがいて」

洗濯もおまかせ。お母さんが家事に追われることなく、しっかりと赤ちゃんに向き合う時間を作ります。

心強い“産後ケア”。しかし誰でも使えるわけではありません。広島市の場合、利用するには、▽広島市内在住で▽家族からの十分な支援を受けることができないなどの条件があります。

あやかさん
「(Q申請は難しかった?)そうですね。一度、市役所に行かないといけなかったり、面談も受けないといけなかったので、もうちょっと簡単にできたらなと思いました」

たから助産院では、疲れたお母さんが気軽に頼れる、もっと身近な存在になりたいと考えています。

たから助産院(助産師)梶岡智佳子 院長
「子育てって家族だけとか、お母さんだけでするものではないし、街全体でみんなの中で育っていってもらえるといい。昭和時代みたいな雰囲気に戻っていけると、健やかに育てられるんじゃないかと思う」

6日間の宿泊を終えた最終日。

あやかさんの夫(36)と長女(2)
「こんにちは」

長女たちが迎えにきました。およそ1週間ぶりに家族が顔を合わせます。

あやかさん
「お母さんだよ!久しぶり!なんか嬉しそう」
長女(2)
「(Qお母さんに久しぶりにあえてどう?)うれしい」

夫(36)
「(Qお父さんはお母さんに会うのは1週間ぶり?)はい。(Q久しぶりに会うお母さんはどう?)きれいになったね」
あやかさん
「…らしいです。(2人も)大きくなったでしょ?あと目で追うようになったね」

疲れ果てていたあやかさん。体力も回復しました。たから助産院で過ごした6日間は、自宅での育児にも自信を与えてくれたようです。

あやかさん(仮名・32歳)
「ここに来るまではがむしゃらに頑張っていた部分もありますが、手を抜けるところは手を抜いて。育児は数ヶ月や1年で終わらないので、うまく付き合っていけたらなと思います」

◇ ◇ ◇

青山高治 キャスター
子育てが一番大変な時はちょっと解放されたり、ちょっと一人になれる数分間がすごく大事。産後ケアがお母さんの体調やお父さんの都合、上の子の状態含めて、ベストな時期に受けられたらいい。

渕上沙紀 アナウンサー
たから助産院の梶岡院長も言われていましたが、お母さんは出産までがゴールになっていることが多い。その先に産後ケアを受けたくても、忙しすぎたり申請に時間がかかり受けられない方もいる。出産前にしっかり準備しておいてほしい。広島県内で産後ケアを受けられるのは、病院や助産院など50施設。うち広島市内は11施設。広島県によると「まだまだ受け入れ体制は十分ではない」とのこと。利用料金は所得によって変わり、広島市の場合、「宿泊型」は無料~6000円あまり、「日帰り型」は無料~およそ3400円。

河村綾奈 キャスター
施設の数や周知するための取り組みも大切ですね。

青山高治 キャスター
あやかさんも言われていましたが、申請がもっと簡単になればいい。

コメンテーター 木下ゆーきさん(子育てインフルエンサー)
いま助けてほしいというときに助けてもらえるようなシステムになるのがベスト。事前申請や審査があるというシステムも変われば、利用率ももっと上がると思う。

小林康秀 キャスター
「今後の生活に生かしていけるサポート」という言葉がありましたが、生活日常に送り出していくケアができていると感じました。

渕上沙紀 アナウンサー
産後ケア、広がっていけばいいですね。

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