古里に凱旋「成長見せる」 シンガポールのバレエ団最高位・上妻さん(山形市出身)

久々となる故郷での舞台に向け、稽古に汗を流す上妻悟さん=山形市・シグナス・バレエスタジオ

 シンガポールのバレエ団で主役級を担う最高位「プリンシパル」を務める、山形市出身の上妻悟さん(26)が18日、かつて腕を磨いたバレエ教室「シグナス・バレエスタジオ」(同市)の発表会に出演する。高校時代以来となる古里の舞台を控え、「お世話になった人たちに成長した姿を見せたい」と意気込んでいる。

 上妻さんは劇団四季の「ライオンキング」を見て舞台芸術に憧れを抱き、8歳の頃から同スタジオに通い始めた。高校2年時の2013年、全日本バレエ・コンクールのジュニアA(16~18歳)男性部門で1位に輝いた。

 14年から3年間、オーストラリアのバレエ学校に留学し、卒業後すぐにバレエ団「シンガポール・バレエ」のオーディションに合格。「プロのダンサーとして生きていくのは大変なことだが、団の雰囲気も良く、幸運だった」と振り返る。入団3年目に「ドン・キホーテ」で主役デビューを果たすと、翌年には主要な役を担うことができるソリストへの昇格が認められた。

 順調に階段を駆け上がる一方で「実力が伴っていないのではないか」と苦悩したこともある。転機となったのは新型コロナウイルス禍だった。1年以上公演を開けず、けがも重なり、自分と向き合う時間が増えた。「今は力が及ばなくても、努力を重ね、いつかできるようにする」。積み上げてきたものを信じて、一つ一つの舞台で力を出し切ると意識を変えた。「ロミオとジュリエット」「くるみ割り人形」などの主役も経験し、今年からプリンシパルを務める。

 同スタジオには帰国するたび、必ず顔を出し「ここでの経験が自分の土台となっている。実家のような場所」と語る。念願の凱旋(がいせん)公演は18日午後1時半からやまぎん県民ホールで上演される。演目は「白鳥の湖」。上妻さんはジークフリード王子役を務める。シグナス・バレエスタジオの鈴木栄美代表(71)は「精神的にも頼もしくなった。立ち姿の美しさから王子にぴったりと思っていた」と目を細める。

 相手役のオデットは、同スタジオで共に学んだ古川京佳さん(27)=三川町=が演じる。2人のコンビネーションや、生徒25人による白鳥の群舞も見どころだ。上妻さんは「出演者の気持ちが一つになり、すごい熱量を感じる。プロの世界で培った技術や表現力を存分に発揮し、後輩の励みになりたい」と話した。

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