【千葉雄大】「後半20分は踊り続けます」舞台『ジャズ大名』インタビュー

撮影/石阪大輔

筒井康隆の傑作小説『ジャズ大名』が福原充則の演出で舞台化、2023年12月、KAAT神奈川芸術劇場で上演される。

江戸末期、アメリカから漂着した黒人奴隷と出会った音楽好きの藩主が、彼らの奏でる音楽の虜となり、城中でジャム・セッションを繰り広げる姿を描く奇想天外なコメディ。

岡本喜八監督、古谷一行主演による映画(1986年)でも有名な本作だが、今回は小説から新たに上演台本を書き起こす。物語の舞台を原作の九州の小藩から、実在した神奈川・小田原藩の支藩、荻野山中藩に置き換え、神奈川の史実を織り込んだアレンジを加えることで、神奈川を拠点にするKAATならではのオリジナル作品を創りあげるという。

今回、音楽好きの荻野山中藩の藩主・大久保教義役を演じるのは、映画・ドラマだけでなく、近年は『ポーの一族』(’21年)、『世界は笑う』(’22年)と舞台での好演も記憶に新しい千葉雄大。千葉に本作への意気込みを語ってもらった。

【千葉雄大】舞台『ジャズ大名』インタビュー写真

「後半20分は踊り続けます」と言われ……

撮影/石阪大輔

――今回、出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

タイトルの「ジャズ」と「大名」という組み合わせを聞いて、直感で面白そうだなと思いました。話を聞くと「後半20分は踊り続けます」と言われて! 不安になって「僕、ダンスできないけど大丈夫ですか?」と聞くと、「ダンスというより、踊りなので大丈夫です」と言われました。本当に大丈夫なのかはまだ分かりませんが、テンション高く行こうと思います(笑)。

――千葉さんはダンスが苦手なのですか?

はい……。僕、ダンスやアクションといった体育会系があまり得意ではなくて、本気でやるんだったら、1年ぐらい準備期間が欲しいタイプなんです。逆に文化系は頑張りたいですね。今回も楽器の演奏があると聞いています。こういう機会がないと、なかなか楽器に触れることもないですから。

ミュージカルに出演したときも思ったんですけど、その舞台やお仕事が終わっても、残るものがあるのっていいですよね。練習や習得は大変だけど、結果、自分の武器が増える感じがして。

撮影/石阪大輔

――20分踊り続けるとなると、なかなか体力勝負となりそうです。普段トレーニングはされていますか?

確かに体力づくりは大事になってきそうですね。僕の場合、朝晩の犬の散歩がいい運動になっているかな。調子がいいと、1日3万歩ぐらい歩きます。

――3万歩はすごいです。ところでお忙しいとは思いつつ、原作小説や映画をあえてご覧にならなかった理由は?

今回は、小説や映画を忠実に再現するわけではなく、また一から上演台本を作るので、あまり先入観を入れたくなかったという理由が大きいですね。実際に稽古をしてみて、何か迷いが出てきて、小説や映画がその参考になるのなら、読んだり観たりするかもしれないですけど……基本的には稽古場で演出家や共演者の方々と話しながら作っていくようにしています。

連続ドラマだと8話目くらいから心を開くタイプ

撮影/石阪大輔

――藤井隆さんとの共演についてもお伺いしたいです。千葉さんは藤井さんのことを「俳優を始める前からのファン」とコメントされていますね。

はい。特にバラエティ番組が大好きで、グッズも買っていました。それに藤井さんの「ナンダカンダ」(2000年リリースの藤井隆の歌手デビュー曲)は今でもよく歌っています。お芝居も素敵ですし、藤井さんは憧れの存在です。

――藤井さん以外にも、初めて共演される方が多い現場。いつもどんなマインドで新しい現場に入られるのですか?

最初は結構猫を被っちゃうんです、僕。「連続ドラマ全10話あったとしたら、8話ぐらいから打ち解けるよね」と言われるほどに(笑)。舞台はお稽古があるので、映像よりは心を開くのも早いとは思うのですが……。

――KAAT(神奈川芸術劇場)は横浜中華街も近いですから、稽古期間中や本番後にご飯会もできたらいいですね?

あー! それ、マジで最高ですね! 大きい回転テーブルでおいしい中華料理を食べたいです。というのも、僕は2020年あたりから年1本程度、舞台作品をやらせてもらっているのですが、コロナ禍ど真ん中だったんですね。

稽古場でコミュニケーションをとることはありましたけど、みんなでご飯を食べたり、わいわいしたりする機会が少なくて......。8話ぐらいから心開くなんて言っていられませんね(笑)。なるべく早めに距離を詰めていけたらいいかな。

撮影/石阪大輔

――この『ジャズ大名』が2023年最後の舞台になると思います。振り返るにはまだ早い気もしますが、今のところ、どんな1年になりそうと感じられていますか?

そうですね、いろいろと挑戦させてもらったなと思います。1月のドラマ『星降る夜に』では手話にチャレンジさせてもらいましたし、『ジャズ大名』の前にやる舞台『あの夜であえたら』(10月上演)は生配信舞台演劇ドラマという新しいスタイルですし。

それで『ジャズ大名』で踊り狂って、1年を締めくくると。......僕、祭りがすごく好きなんですね。「今年もいろいろあったけど、テンションぶち上げて、ハッピーに終わろう!」という気持ちになれそうですよね。

――お祭りがお好きとは意外です(笑)。

僕の祭り人生は、(出身地の)仙台七夕まつりから始まっていると思いますが、音楽も好きなので、音楽フェスも大好きですよ。それから地元の公園で開催されているような盆踊りに参戦するのも好き。時々ファンの方に見つかるのですが(笑)、もう気にせずみんなぐちゃぐちゃになって、一緒に楽しもうとする空間が好きです。

撮影/石阪大輔

――最後に、舞台を楽しみにしているファンの皆さまに一言お願いします!

やはりテレビを見るのとは違って、舞台の場合、観に行こうと思って、わざわざ足を運んで観にきてくださるじゃないですか。だから僕もお客様に何か“お土産”を渡せたらいいなと思っているんですね。駄菓子が好きな人もいれば、高級な贈答用のお菓子が好きな人もいるように、いろいろなテイストの“お土産”がある。

今回の『ジャズ大名』は、現時点でテンションあげあげの「ハチャメチャフェスティバル舞台」になる気がしていて。時代は違えど、好きなことにひたむきになることは素敵なことだと思うし、ギャル魂に溢れた舞台になるんじゃないかな。そういうテイストが好きな人にはぜひ観にきて欲しいですね。

ヘアメイク/堤紗也香 スタイリング/寒河江健

公演情報

『ジャズ大名』
2023年12月9日(土)~2023年12月24日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
ほか 兵庫(神戸)、愛知(刈谷)、大阪(高槻)公演あり

原作:筒井康隆
上演台本:福原充則 山西竜矢
演出:福原充則
音楽:関島岳郎
振付:北尾亘

出演:千葉雄大 / 藤井隆
大鶴佐助 / 山根和馬 / 富田望生 / 大堀こういち
板橋駿谷 / 北尾亘 / 永島敬三 / 福原冠 / 今國雅彦 / 佐久間麻由
ダンテ・カーヴァー / イサナ / モーゼス夢 ほか

(Medery./ 五月女 菜穂)

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