忘れないで…拉致問題「昔話ではなく現在進行形」さいたまで横田哲也さん訴え “幼馴染”の小学校校長も登壇

拉致問題を考える埼玉県民の集いで「ふるさと」を合唱する(左から)本間清子さん、鈴木正子さん、横田哲也さん、白石徳一郎さん=16日午後、埼玉県さいたま市浦和区

 拉致問題を考える埼玉県民の集いが16日、さいたま市浦和区東高砂町のコムナーレで行われ、約450人が参加した。講演した横田めぐみさん=失踪当時(13)=の弟・横田哲也さん(55)は「45年以上前に起こった事案を解決できていないのが現実。一番つらいのは幽閉されている被害者たちで、それを思うと弱音を吐いていられない」と早期解決を訴えた。

 横田さんは王貞治さんの765号本塁打、日航機ハイジャック事件、チャップリン死去など、めぐみさんが拉致された1977年の出来事を挙げ、「昔話をするようで過去形になるが、拉致事件は現在進行形。今も助けてという声が聞こえる。同じ日本人として見捨てるわけにはいかない。北朝鮮が安易な決着を図らないようにわれわれが注視しなければならない」と救出への思いを語った。

 横田めぐみさんが広島に住んでいた時期に小学校へ一緒に登校していた、さいたま市立新開小学校校長の白石徳一郎さんが拉致問題に関する授業の実践報告を行い、「めぐみさんは優しく、面倒見がよく、頼りになるお姉さんだった。家も社宅が隣同士でよく遊んでいた」と当時の状況を振り返った。

 横田家と家族ぐるみの付き合いがあった白石さんは、2020年に亡くなった横田滋さんのお別れ会で哲也さんと再会。「親世代が少なくなっていく中で、若い人たちが伝えていかないと、誰も伝える人がいなくなってしまう」と生徒たちに伝える活動を始めた経緯を語った。

 1978年に北朝鮮に拉致された田口八重子さん=川口市出身、失踪当時(22)=の姉(長女)鈴木正子さんは「本当に時間がない。私たちの家族も3人亡くなった。皆が期待したけど、一歩も進まない」と早期解決を訴え、田口さんの義理の姉・本間清子さんも「ずっと会えず、全ての拉致被害者と、その家族の両方が元気な間に会わせてあげたい。皆さん忘れないでください」と目を赤くして声を張り上げた。

 同会場では拉致被害者の家族写真や当時の状況、人となりがつづられたパネルが展示され、募金や署名活動も行われた。

会場では田口八重子さんら拉致被害者の家族写真や当時の状況などのパネルが展示された

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