被災の珠洲、快走でエール ツール・ド・のと400

地震で一部が崩れた見附島を背にペダルをこぐ参加者=珠洲市宝立町

 北國新聞創刊130年記念ひゃくまん穀(ごく)プレゼンツ第35回ツール・ド・のと400(同実行委、北國新聞社主催)は2日目の17日、輪島市から七尾市までの136.1キロで行われた。5月に最大震度6強に見舞われた珠洲市では、被災した人たちを励ます思いを込めて出場者が力強くペダルを踏み、住民も真夏日の空の下、熱い声援を送って歓迎した。

 2日目には377人がエントリーした。午前7時半に輪島市マリンタウンを出発、珠洲市、能登町、穴水町を通過して七尾市の和倉温泉運動公園ヨットハーバー駐車場に到着した。

 珠洲市では、屋根や外壁にブルーシートがかかる住宅地を抜け銀輪を連ねた。一部が崩れた見附島では、愛車と記念写真に納まるサイクリストの姿もあった。

 両親が珠洲出身の田中琴絵さん(53)=横浜市=は夫の孝一さん(55)と一緒に初参加した。琴絵さんは「見附島は小さくなっても迫力は変わらない」と笑顔を見せ、孝一さんは「人が温かい能登は最高」と23日開幕の奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)も見て回りたいとした。

 暑さとも闘う出場者を激励しようと住民は自転車が通るたびに拍手を送った。仏壇が傾いたままという上戸町の西田美洋子さん(75)は「笑顔で手を振ってもらい、こっちが元気をもらった」と目を細めた。

  ●「山の神」ら著名選手「勇気づける走りを」

 著名選手も能登路を快走し「県内外から多くの人が集うイベントは復興につながる」とエールを送った。

 全日本マウンテンサイクリング大会in乗鞍で歴代最多タイの8勝を挙げ「山の神」と呼ばれる森本誠さん(43)=愛知県蟹江町=は「能登にはほどよいアップダウンがある。3日間の走りで住民の皆さんを勇気づけたい」と話した。

 悪路で速さを競うシクロクロスの全日本選手権大会マスターズを5年連続で制した筧五郎さん(48)=名古屋市=は6度目の出場。「地震の影響を心配したが、変わらぬ風景が広がっていてほっとした」と振り返った。

 大会は1906(明治39)年に北國新聞社が北陸で初めて開催した長距離ロードレース「自転車大競走」を源流とする。最終日の18日は、氷見市を経由してスタート地点である金沢市の県西部緑地公園に戻る138.2キロで行われる。

ツール・ド・のとの魅力を語る森本さん(左)と筧さん=七尾市の和倉温泉運動公園ヨットハーバー駐車場

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