九十九島と俳句

 佐世保で好きな景色はどこですか、と聞かれることがある。決まって九十九島の夕景だと答えている。よく晴れた春の日、丘の上からの眺めは素晴らしかった▲九十九島にはいくつの島があるのか。公式には208。これは市と市民らでつくる調査研究会が約1年半かけて調べ、2001年に発表した数だ▲俳句誌「同人」佐世保支部長の髙永久子さんも研究会に参加し、小舟で島々をまわった。調査で訪れた島の一つに上小高島(かみこたかじま)があった。現在は無人島だが、戦前戦後にかけて別荘や料亭として使われた建物があり、人の往来があった▲島には「九十九島の一つ乃(の)島に明易(あけやす)き」と刻まれた句碑がある。「同人」を主宰した俳人、青木月斗(げっと)が終戦の年に佐世保を訪れた際に詠んだといわれている。句碑のことを知らなかった髙永さんは思いがけない“出会い”に感激したという▲研究会参加者の中には、その後も保全活動などで九十九島と関わっている人もいる。髙永さんも何かできないかと考え、九十九島パールシーリゾートに俳句箱を置かせてもらい、訪れた人に投句を募っている▲毎年、入賞作品を選び、該当者に連絡すると、「また来ます」「佐世保大好きです」といった返事がくるという。あす9月19日は九十九島の日。夕景を思い浮かべながら、一句チャレンジしてみようか。(永)

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