胃がん乗り越え89歳で富士山登頂 宇都宮の設楽さん 情熱衰えず、年1回が目標

富士山の山頂に立つ設楽さん(左)と小松原さん

 18日は「敬老の日」。仕事や趣味など生きがいを持ち、輝く高齢者は栃木県内にも少なくない。登山愛好家が集まる「宇都宮ハイキングクラブ」に所属する宇都宮市西川田南1丁目、設楽(したら)康雄(やすお)さんは今夏、89歳で富士山登頂を果たした。約10年前に胃がんで胃の3分の2を切除したものの、登山への情熱は衰えず精進した。共に山頂に立った仲間への感謝を口にしながら「元気なうちはやめられない」と先を見据えている。

 設楽さんは前橋市出身。高校生の頃から、身近な谷川岳や尾瀬などで山歩きを楽しんだ。地元の高校を卒業後、足利銀行に入行。山登りの機会は減っていったが、退職後に友人の勧めで同クラブに入会してからは、昔の楽しさを思い出し登山にのめり込んだ。

 国内にとどまらず、キリマンジャロやモンブランなど海外の名だたる山も制覇した。そんな中、80歳の時に胃がんが見つかり、胃の3分の2を切除した。ただ術後の回復は早く12日間で退院。同クラブに勧誘した大森祥子(おおもりとしこ)さん(78)は「手術後も元気でびっくりした」と振り返る。

 手術後、トレーニングを兼ねて始めたウオーキングは毎朝6キロ。翌年には岩手県の栗駒山を登った。

 富士山登山は設楽さんのライフワークで、大病を患った後も3回を数えた。4回目となった今年は同クラブのメンバー5人と8月30日出発。8合目の山小屋で1泊して翌31日に山頂へ到達した。再び山小屋に泊まり、9月1日下山した。

 山頂付近の急傾斜に苦労しながらも無事登頂した設楽さんは「登山口から見上げると、圧倒的な高さ。不安になったが、山頂では達成感でうれしくなった」と話す。一緒に登った同クラブの小松原鶴之(こまつばらつるゆき)さん(76)は「設楽さんは、私たちの目標です」と喜んだ。

 日課のウオーキングは、天候の悪い日でも欠かさないという設楽さん。「元気なうちはやめられない。年1回の富士山登山がこれからの目標」と力を込めた。

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