犬同士が喧嘩をするのはなぜ?4つの原因や心理、飼い主がすべき対応とは?

犬同士が喧嘩をする原因や心理

犬は表情やボディランゲージ、声、そしてニオイを使って、犬同士の間で非常に高度な意思疎通を図っています。しかも、これら「犬語」ともいえるコミュニケーションツールは、世界共通であることも分かっています。

犬は、優位行動と劣位行動により無用な争いを回避します。優位行動とは普通に自信がある犬の行動、劣位行動とは自信がない犬の行動です。現在では否定されている支配性理論の名残で、犬同士の順位付けに関連していると思われがちですが、上下関係とは関係ありません。

狭い道で人がすれ違うときに、どちらか一方が「どうぞ」と道を譲ることでスムーズに通り抜けられます。この譲る行為が劣位行動、譲られた側の行為が優位行動にあたります。

「譲る」の他にも、劣位行動は「不安」「恐怖」「自信がない」「甘える」など、状況によってさまざまな感情から出てきます。いずれにしろ、片方が劣位行動をすることでトラブルを回避しているのです。

そのため、基本的には犬同士が本気の喧嘩をすることは稀だといえますが、犬同士で喧嘩をする事が絶対ないわけではありません。そこで今回は、犬同士が喧嘩する原因や心理について考えてみましょう。

1.犬同士のコミュニケーション方法を知らない

尻尾をピンと立て、足を大きく開いて胸を張り直立している状態は、優位行動です。興奮していると、首や背中の毛を逆立てることもあります。逆に自分の体をできるだけ小さく見せたり、顔や視線を逸すなどのカーミングシグナルを出している状態が劣位行動です。

しかし、相手がその意味を理解できなければ、無用な争いは回避できません。特に劣位行動を取っているにも関わらず状況が変わらないと、不安や恐怖から劣位行動を取っていた側の犬が攻撃行動に転じることがあります。

犬は、生後3〜12週齢までの社会化期と呼ばれる時期に、母犬や他の子犬との交流を通して犬語を学ぶのですが、それができなかった犬は、犬語を理解できないまま成犬になってしまいます。

また、飼い主さんが犬語を理解できないために、愛犬が飼い主さんに対して攻撃行動を取ることもあります。

2.嫉妬

すでに愛犬と一緒に暮らしている中で新しい犬を迎えたときに、飼い主さんの関心が新入りの犬にばかり集中してしまうことで、先住犬は自分への愛情が奪われたと不安になり、嫉妬から新入りの犬に対して攻撃的になることがあります。

このときに、新入りの犬が犬語を理解できなかったり、お互いに優位行動を譲らない場合は、本気の喧嘩に発展してしまうこともあります。

3.奪われたくない

犬は、自分のものや居場所を奪われることを非常に嫌います。野生動物は、自分の獲物や繁殖相手、休息場所を獲得したり守ったりするために、必死にライバルと戦わなければなりません。その習性が、現在の犬たちにも残っているのだと考えられています。

そのため、多頭飼育の場合は食事やお気に入りのおもちゃの取り合いが発生することがあります。しかしこれも、同じ群れの仲間同士ですので、基本的には優位行動と劣位行動で基本的には解決できることが多いでしょう。

4.無去勢のオス同士が発情中のメスを争う

去勢手術をしていないオス同士が発情中のメスを争っている場合は、本気で喧嘩をすることがあります。この場合も、明らかに体格や経験などに差がある場合は優位行動と劣位行動により喧嘩は回避されますが、犬語が理解できなかったり実力が拮抗していると喧嘩に発展することもあります。

未去勢の犬が逃げ出し、数日後に怪我をして帰ってきた場合は、このケースに当てはまるかもしれません。

犬同士が喧嘩を始めそうなときに飼い主がすべき対応

では、犬同士が喧嘩を始めそうなときに、飼い主はどのような対応をすべきなのでしょうか。

じゃれ合いと喧嘩の違いを見極める

止めるべき喧嘩なのか、単にじゃれ合って遊んでいるのかを見極めることが大切です。

犬が遊んでいるときの顔は目を大きく見開き、口を大きく開けるため、一見すると不安から攻撃行動に転じたように見えるかもしれません。

また、犬の大好きな遊びは狩りのシミュレーションなので、お互いに狩る側になったり狩られる側になったりして追いかけ合ったり、上や下になったり、また咬んだり咬まれたりしながら遊びます。

ただしよく観察していると、じゃれ合っている場合は「交互に役割を交代している」「お互いのエネルギーが同程度」「緊張感がなく力が抜けた動き」「咬み方が本気ではない」「時々小休止を挟んでいる」という様子が分かります。

喧嘩が始まる前に引き離す

犬同士の本気の喧嘩が始まってしまったら、お互いに興奮状態になるため間に割って入るのは飼い主さんでも危険です。

双方の犬のボディランゲージをしっかりと読み解き、喧嘩が始まる前にお互いを引き離すのが最善策です。

相性が悪い犬には近づかない

もし相性の悪い犬が分かっているのなら、その犬には近づかないことです。

その犬がいる家の前は通らない、散歩中に向こうから来るのが見えたら別ルートに変更するなど、飼い主さんがしっかりと愛犬を誘導しましょう。

間に割って入る

どうしても相性の悪い犬や、攻撃的な犬とすれ違わなければならない場合は、相手の犬と愛犬の間に飼い主さんが割って入りましょう。

飼い主さんの体は相手の犬の方に向け、足を大きく開いて多少前傾姿勢を取ると良いでしょう。愛犬には背中または体の側面を向けます。

まとめ

たとえ社会化期にうまく社会化できなくても、専門家に力を借りながら成犬を社会化することは、根気も時間も必要ですが可能です。

そして何よりも、飼い主さん自身が犬の習性や行動学の最新の知識を身につけ、愛犬が発しているサインを読み取れるようになることが、愛犬を守ることにつながります。

© 株式会社ピーネストジャパン