社説:国会召集の義務 内閣に期限を課す法改正を

 「国権の最高機関」である立法府(国会)の開会という正当な求めを、行政府(内閣)がたなざらしにする非民主的な事態を防ぐ契機にせねばなるまい。

 安倍晋三内閣が2017年、臨時国会の召集要求に約3カ月間も応じなかったのは憲法違反だとして、野党議員らが国に損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁は上告を棄却した。

 憲法53条は衆参いずれかの4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は国会を召集しなければならないとする。ただ、期限は明示していない。

 判決は安倍内閣の違憲性は判断せず、53条は「個々の議員の権利などを保障したものではない」としたが、内閣は臨時国会の召集義務を負うと認めた。

 さらに裁判官5人のうち1人は、要求から召集までの合理的な期間として「20日あれば十分」と具体的に言及。特段の事情がない限り、今回の召集遅延は違法とし、損害賠償命令が相当との反対意見を付けた。

 内閣の召集決定は「憲法上の義務」と、最高裁が初判断を示した意義は重い。政府は真摯(しんし)に受け止めるとともに、与野党には国会法を改め、召集期限を設けることを求めたい。

 17年は安倍氏の妻や友人が関わった森友・加計両学園を巡る問題があり、野党が6月に臨時国会召集を求めた。だが、安倍氏は内閣改造などで低迷する支持率の回復を待ち、9月下旬まで応じなかった。さらに国会を開くや冒頭で、北朝鮮の脅威や少子化進行を取り上げ「国難突破」を名目に衆院を解散した。

 立法府での議論を封じる「安倍1強」の横暴だろう。許した与党の責任も大きい。

 以降も同様のケースが続き、政権の思惑を優先させることが常態化している。昨年も岸田文雄内閣が1カ月半にわたり、野党の召集要求に背を向けた。この間、岸田氏は閣議決定だけで銃撃された安倍氏の国葬を強行し、批判を浴びた。

 臨時国会の開会後、立憲民主党や日本維新の会など5党が共同で、内閣に20日以内の召集を義務づける国会法改正案を提出したのは当然だろう。

 与党は5年ぶりに国会改革小委員会の開催に応じ、野党案を議論したものの、反対した。

 最高裁の反対意見や野党案が召集を20日以内としたのは、自民党が12年にまとめた憲法改正草案に期限として明記したことに基づく。地方自治法も議員要求による臨時議会の招集期限を、20日以内と定めている。

 与野党合意はできるはずだ。「民主主義が危機に瀕(ひん)している」と明言し、首相に就いた岸田氏の初心にもかなうだろう。

 召集義務を負った内閣の不作為を放置するなら、議員は怠慢のそしりを免れない。内閣に召集期限を課すことで、内閣をチェックする国会の権能と、国民からの信頼を取り戻すべきだ。

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