新作設営ピーク 23日開幕の奥能登芸術祭

見附島の鳥居をヒントにした「自身への扉」と作家のアフメッドさん(左)=珠洲市馬緤町

  ●6割弱の20点完成

 23日に珠洲市全域で開幕する奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)で、参加アーティストによる作品の設営作業がピークを迎えている。実行委員会によると、3連休最終日の18日までに、新規展示36点のうち6割弱の約20点が完成した。今回は過去最多となる14カ国・地域のアーティスト59組が参加する予定で、20日ごろに作品が出そろう見通しという。

  ●馬緤町には鳥居の作品

 18日は海辺に岩礁が広がる馬緤(まつなぎ)町の波打ち際で、アゼルバイジャン出身の工芸作家ファイグ・アフメッドさん(41)が制作した「自身への扉」の安全祈願祭が執り行われた。アフメッドさんと地元住民ら約20人が芸術祭の成功を期した。

 作品は高さ約4メートルの木製で、イメージは鳥居。金属やプラスチックの小片で光を反射する素材「スパンコール」で全体を覆い、素材が風に揺れて光を放つ仕組みで、日本海に吹く風の動きを可視化した。

 鳥居をモチーフとしたのは、昨年10月に珠洲市を視察に訪れた際、見附島(みつけじま)の脇に立つ鳥居にインスピレーションを受けたからだという。アフメッドさんは「鳥居の神聖さを表現した」と説明した。

 ●漆で空き家に息吹 「旧島崎家」で田中金沢美大教授

 珠洲市蛸島町の古民家「旧島崎家」では18日、漆作家で金沢美大教授の田中信行さん(64)が手掛けた作品「触生」が設営された。空き家に息吹を注ぐイメージで、朱漆を使って生命の循環と再生が表現された。

 高さ約2メートルの立体作品で、発泡スチロールに麻布を漆で貼り重ねる乾漆技法でしなやかな質感を出した。「漆の歴史が深い奥能登で作品を発表することができてうれしい」と話している。

 会場の空き家は5月の奥能登地震で一部損壊したが、補修された。

空き家に設営された作品と田中さん=珠洲市蛸島町

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