厳罰化にかじを切った少年法、岐路に立つ更生支援 再非行率高止まり、矯正教育を模索

神戸新聞NEXT

 少年法が昨年、大きく変わった。18、19歳を「特定少年」と新たな区分でくくり、成人に準じた刑事手続きも可能になった。法改正を受け、設置から今年で100周年を迎えた少年院は、「18歳成人」時代に応じた新たな矯正教育を始めている。少年犯罪の摘発自体は減少傾向が続くが、再非行者の割合は3割超で高止まりする。被害者への償いの意識が十分育っていないという指摘もある。更生支援は今、岐路に立っている。(霍見真一郎)

 2022年4月1日、成人年齢は2歳引き下げられ、選挙権だけでなく、民法の規定も変わって18歳以上は「大人」として扱われるようになった。しかし、同時に施行された改正少年法は、20歳未満を「可塑性(柔軟性)がある」などとして、これまでのように少年として取り扱うことを維持した。警察や検察が捜査しても、成人のように起訴はされず、家庭裁判所に全件送致されるのも従来通りだ。一方、新たに設けた18、19歳の特定少年は、刑罰で対処される罪種が増え、検察官送致(逆送)の後に起訴されると、実名報道が可能になった。

 では、「大人」でもなく「子ども」でもない、「特定少年」という折衷案が生まれた背景は何なのか。

 まず、法の大枠が維持されたのは、従来の少年司法手続きで効果が一定みられることがある。法務省の「令和4(2022)年版犯罪白書」によると、少年による刑法犯の検挙人数(補導を含む)は、平成期から減少傾向にあり、人口減少を反映したデータでさえ、検挙人数は20年前の5分の1以下になっている。少年院の入院者も、1949(昭和24)年以降で最も少なかった。2021年の少年刑法犯2万930人を罪名別に見ると、半数以上(1万869人)を窃盗が占める。

 一方、刑法犯で検挙された少年における再非行者の割合は、98年から上昇し続け、2017年以降は若干、低下傾向にあるものの、21年は約34%と高止まりしている。実際、同年の少年院入院者のうち、男性の約66%、女性の約37%は、過去に少年院送致や保護観察を経験していた。

 少年院は、今回の法改正を契機に、特定少年の在院者に対し、成年の自覚や責任を喚起し、社会参加に必要な知識を与えるとしたプログラムなどを始動。保護観察所との連携を前提にした取り組みも始めた。

 ただ、同白書によると、21年に少年院に入った少年のうち、男性(1258人)の4割、女性(119人)の6割に虐待された経験があった。「全国再非行防止ネットワーク協議会」(名古屋市)が20年に少年院を対象に行ったアンケートでは、帰住(受け入れ)調整に困難を要した退院者の9割が、保護者の下ではない施設などに入ったことも分かった。

 こうした元非行少年の成育環境に心を寄せ、立ち直りの支援に力を入れる人は少なくない。一方、従来の矯正教育では、罪を償う意識を育てるのには程遠いという犯罪被害者側の声があるのも事実だ。少年法が変わり、刑罰と矯正の線引きが揺らぐ今だからこそ、更生支援のあり方が問われている。

© 株式会社神戸新聞社