獲る魚の量は半分以下でも売上は2倍…漁業界を変える「完全受注漁」とは 岡山

岡山県玉野市の漁師が、「海の資源を守りながら客からの受注分しか魚を獲らない」という新たな漁法に取り組んでいます。操業時間も短くなり、家族と過ごす時間も生み出しました。

(瀧川奈津希リポート)
「船がずらりと並んでますね。午前7時半です。玉野市の胸上漁港に来ています。これからこちらの船に乗って漁に同行してきます!」

同行させてもらうのは漁船「邦美丸」を操業する漁師・富永邦彦さん(36)です。

瀧川アナ「きょう狙うのは何ですか?」
富永さん「真鯛です!」

底引き網漁で次々と魚を獲っていきます。獲れた魚はそのままいけすの中へ……ではなく! 取り出して……。

瀧川アナ「海に戻しちゃうんですね?!」
富永さん「注文以上に獲れたお魚はリリースします」

富永さん「こんな風にメールで注文が入るんです」
瀧川アナ「直接注文を受けているんですね」
富永さん「長野県の方(の注文)です」

富永さんが取り組んでいるのは、オンラインやSNSで事前に注文された分だけの魚を獲る「完全受注漁」。たくさん獲れても注文のない魚は海へ戻します。

(漁師/富永邦彦さん)
「年々水揚げが減っているのを肌で感じているので、これから水産資源を守りながら持続可能な漁業にしていくには、必要以上に獲らない方法かなって思ってます」

漁獲量は年々減少傾向にあり、持続可能な漁業を目指すには水産資源を守ることが大切です。

「完全受注漁」を始めてから富永さんが獲る魚の量は、半分以下になったそうですが……「自ら販売するので売上は2倍に上がりました」。受注漁は消費者と直接取引ができるので、変動する市場価格の影響を受けず安定した価格で売ることができるからです。

18日は漁を始めてから約4時間で港へ戻りました。

瀧川アナ「漁師さんって長時間海の上にいるイメージでした」
富永さん「朝行って昼戻って、夕方は子どもの保育園迎えに行くようになりましたね」

通常の漁の操業時間は14時間ほどでしたが、「完全受注漁」に切り替えてから半分以下にまで減らすことができ、家族と過ごす時間を増やせたそうです。

(漁師/富永邦彦さん)
「『絵本読んでー』と言われたり」

港に戻ると妻の美保さんと子どもたちが迎えてくれました。

(小学6年生/富永竜空くん)
Q.お父さんはどう?
「公園に連れて行ってくれる。楽しい」

発送作業は夫婦で行います。人気があるのは魚の種類お任せの詰め合わせセットです。(3600円 税込み)

地元のほか全国の料理店や個人に向けて発送します。

水産資源を守りながら家族と過ごす時間を生み出した富永さんが目指すものとは。

(漁師/富永邦彦さん)
「漁業界って働く環境が厳しくて夢がない儲からないんですけど、こういう活動を通して漁業の世界も夢ある職業にしていきたい」

© 株式会社瀬戸内海放送