リーグ3連覇目前のオリックスは「女の子の心をつかむのがうまい」 観客動員数が過去最多ペース、背景にユニークな広報戦略

ほっともっとフィールド神戸で多くのファンが声援を送った=9月5日、神戸市須磨区緑台(撮影・長嶺麻子)

 マジックナンバーを「2」とし、パ・リーグ優勝を目前にするプロ野球オリックス・バファローズ。本拠地の京セラドーム大阪(大阪市西区)と、ほっともっとフィールド神戸(神戸市須磨区)の観客動員数の合計が、実数発表となった2005年以降で過去最多ペースとなっている。背景の一つに、選手が「アイドル」や「お笑い芸人」にふんするユニークな広報戦略があるとみられ、若者や女性ら新たなファンを獲得。リーグ3連覇に向け、球場は熱気に包まれている。

 チームはブルーウェーブ時代、阪神・淡路大震災が起きた1995年と96年に「がんばろうKOBE」を掲げてリーグ連覇。近鉄との球団合併や低迷期を経て、2年前に中嶋聡監督の下、25年ぶりのリーグ優勝を果たすと、昨年は26年ぶりの日本一に輝いた。

 今年は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した山本由伸投手や宮城大弥投手のほか、西武から新加入した森友哉捕手もチームを盛り上げ、8月26日に優勝マジックナンバーが点灯した。

 チームの勢いを反映し、主催試合の観客動員数は増加。7月11日には最速で100万人を突破した。今月18日時点では計165万1070人(61試合)に上り、1試合平均は2万7067人。観客動員数のシーズン最多は、16年の179万4475人(72試合)、1試合平均は2万4923人で、今季は現時点で過去最多ペースとなっている。

 ほっと-単独でも、今季7試合の1試合平均は2万6575人でここ10年で最多を記録。新型コロナウイルス禍で入場制限があった20年の平均は4776人で、それ以前は平均1万人台の年が3年続いていた。花火大会もあった今年7月23日の試合は3万3950人(収容可能人数3万5千人)がスタンドを埋めた。

 観戦に訪れた甲南大4年の女性(21)=大阪市北区=は「天然芝がきれいで、開放感があっていい。花火も好き。もっと神戸での試合が増えてもいいのに」と話す。さらに「オリックスは女の子の心をつかむのがうまい」。球団の公式交流サイト(SNS)などをこまめにチェックし、「選手同士の仲の良さを知ることができて、より応援したくなる」と語った。

 

熱気の理由

 観客動員数が伸びている背景について、「特に若い女性の割合が増えている」と球団の広報担当者は言う。コロナ禍前の19年は女性の来場者は全体の約25%だったが、22年は約30%になり、今年は8月までで38.9%を占める。

 さらに、今年は「20代女性の来場者は昨年比で189%」といい、担当者は「チームが強くなったことで関心を持ってくれた女性を、魅力的なイベントや企画で来場につなげられるようにしたい」と力を込める。

 その仕掛けの一つが「アイドル」をコンセプトに、6月の6試合で実施したイベント「Bsオリ姫デー」だ。選手が「キュート」や「クール」なアイドルになりきった画像が、SNSなどで公開されると話題沸騰。変身した選手たちのポスターに彩られた球場はアイドルのコンサート会場のようで、関連グッズも飛ぶように売れた。今季のグッズ売り上げは「近年で1番」という。

 選手が漫才コンビにふんしたポスターも注目に。人気のお笑いコンテストにならい、「大阪らしさも表現できてぴったり」と打ち出した企画「キングオブコンビ」。選手たちはマイクを前にちょうネクタイ姿でポーズを決め、プレー時とのギャップが笑いを生んだ。

 増大中のファンに支えられ、早ければ20日にもリーグ優勝が決まる。「兵庫にルーツを持つ球団として、期待に応えられるように頑張ります」。球団からのメッセージだ。(中島摩子、井川朋宏、小森有喜)

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