広島県の工業地が8年連続で上昇 背景にネット通販の急成長 商業地への影響を懸念する声も 不動産業者「アパレル中心の商店街は多様化へ」

広島県内の地価が好調です。工業地は8年連続、商業地は2年連続の上昇となりました。工業地の好調の背景には、ネット通販の急成長があるようです。

地価調査は、7月1日の時点で県内421か所を対象に実施されました。地価の増減を示す「変動率」の平均値で上げ幅が最も大きかったのは工業地です。

広島県 環境県民総務課 杉山浩紀 課長
「工業地につきましてはプラス1.5%、8年連続で上昇しております」

背景にあるのが、ネット通販の急成長に伴う流通業務地の需要拡大です。3年前には最大手のアマゾンジャパンが山陽自動車道の五日市インターチェンジ付近に配送に特化した物流拠点を設けました。ネット通販はコロナ禍でさらに勢いを増し、志和インターチェンジそばの志和流通団地、そして廿日市木材港や五日市港などのエリアで流通業務地の需要が高まっているといいます。

広島県地価調査鑑定評価員 仁王頭毅 代表幹事
「巣ごもり需要からEコマースなどのネット販売では、そういった倉庫地がどうしても周辺に必要」

一方、住宅地の平均変動率は、3年続いた下落から横ばい傾向になり、マイナス0.02%。好調なのは新白島駅から近い広島市中区白島中町で、16年連続で最高となる1平方メートルあたり47万2000円。上昇率は6.1パーセントで、こちらも県内トップでした。商業地の平均変動率は2年連続で上昇して、プラス1.3%。最高価格は38年連続で本通の金正堂ビルで、1平方メートルあたり328万円。上昇率のトップは去年に続いて、南区京橋町のTATSUMI広島駅前ビルで、8.8パーセントでした。

杉山課長
「広島駅ビル及び広島電鉄の路面電車の駅前大橋ルートが令和7年完成予定ということで、地域発展の期待が上昇傾向にあるということでございます」

今後、景気の回復とともに県内の地価は都心部を中心に堅調に推移しそうだといいます。

しかし、商業地の地価上昇は必ずしも地域の発展を反映していないという不動産業者もいます。

ゼネラル興産 山下泉 会長
「ご商売をする人が土地を買ってるかというとそうではなくて、不動産の投資家とか不動産ビル経営をするような人、そういう方が取得されてるケースが多いですね」

広島で50年、不動産業を手がけるゼネラル興産の山下会長は、先月末にそごう広島店の新館が営業を終えるなど、百貨店の閉店やアパレルブランドの撤退が相次いでいると指摘。

ネット通販は衣料だけでなく食料や日用品でも拡大し、商業地の地価にも影を落とす可能性があるとみています。

山下会長
「ネット通販っていうのはけっこう安いでしょ、で、人件費も要らない、それから家賃も要らないということで、安く販売しているので、それに負けないだけの商売をできるかどうか、そこの知恵が要りますよね。今までのようなアパレルを中心に商店街を構成してきている傾向が強いんですけど、これからは多様化するでしょうね」

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