住宅需要、県全体に拡大 基準地価・物価高影響、山形周辺市部が好調

市町村別・用途別対前年平均変動率

 県が19日に発表した県内の7月1日現在の地価(基準地価)は、全用途の平均変動率が前年比マイナス0.2%となった。山形市で堅調だった住宅需要が県全体に広がり、昨年のマイナス0.4%から下落率は縮小した。物価高騰に伴って建築費が上昇していることもあり、住宅地は価格の高い山形市に比べて周辺市部の需要が好調という。

 県内の基準地点は住宅地160、商業地68、工業地23、林地9。住宅地は43地点、商業地は16地点で上昇した。

 住宅地は26市町村で上昇率拡大・下落率縮小の傾向にある。県地価調査代表幹事の月田真吾不動産鑑定士は「『山形市1強』から『県全体の下落率縮小』にフェーズが変わってきた」と指摘する。山形市は、上昇率が昨年の1.9%から0.9%に縮小し、これまでの上昇基調が落ち着いてきたと見る。

 住宅建築費が高騰した分、土地価格の高い山形市では求めやすい場所が見つかるまで様子見をする動きがある。一方、周辺の市部は堅調で、変動率上昇基準地上位5地点のうち天童市内が4地点を占めた。

 商業地は、山形市の上昇率が昨年の1.2%から0.8%に縮小した。同市中心部ではマンション用地としての需要が続いている。一方、年内でシティーホテルが閉館し、その後の事業計画が未定であることがマイナス要因とされた。飯豊町は下落率が拡大し、マイナス0.4%となった。「飯豊電池バレー構想」を背景に一時は上昇していたが、関連する電動モビリティシステム専門職大学の定員割れなどが響いた。

 工業地は県全体で上昇率が昨年の0.2%から0.3%に拡大した。「土地があれば進出したい」といった潜在的な需要があるという。

 今後の見通しについて月田氏は、住宅需要の堅調さは継続すると指摘。商業地では、中古車販売業界で発覚した不正が、保険を扱う自動車関連産業が集積する国道13号や、通称「西回りバイパス」(山形市)の沿線にマイナス影響を及ぼす可能性もあるとした。

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