酒田市中心街、活性化策は 研究20年の集大成、日大の仲川教授(酒田出身)が出版

「『グリーン・ハウス』があった街 メディア文化の街はどこへ向かうのか」

 日本大文理学部の仲川秀樹教授(64)=酒田市出身、社会学=が、同市で20年にわたり続けてきた中心市街地活性化を探る研究の集大成として、「『グリーン・ハウス』があった街 メディア文化の街はどこへ向かうのか」を出版した。映画館や百貨店がシンボルだった街から、今後は既存の通りや店舗などを生かして「ショッピングモール」と位置付け、魅力を高めるまちづくりを提言している。

 映画館などから発信される娯楽性の高い文化を「メディア文化」と定義し、同市を「メディア文化の街」と位置付けた。同文化を醸成した存在に複合映画館の先駆け「グリーン・ハウス」、エンターテインメント空間としての百貨店「清水屋」を挙げた。グリーン・ハウスは酒田大火で1976(昭和51)年に焼失、清水屋は経営改善が望めず2021年に閉店した。

 書籍では、二つが街に果たした役割を再検証した過程、ゼミ生と03年から実施してきたフィールドワークやシンポジウムの内容と結果を記した。その上で「800メートル中町ショッピングモール化」を提言した。

 中通り商店街から日和山公園までの通り約800メートルを、飲食店や洋服店が点在する一つの複合施設と捉えるアイデア。毎日多くの集客は困難でも、イベント開催で「1年に12日間人を集める」ことを提案した。ショッピングモールのまちづくりは、昭和のレトロな雰囲気を残す喫茶店が若者世代に人気がある点などを踏まえ、現代の人々に関心を持ってもらえるよう、原風景を再考しつつ時代の変化に合わせたスタイルの提供が求められると指摘した。

 仲川教授は20年の研究を一区切りとする考え。ただ今後も、ゼミ生とシンポジウムを開催するなど研究は続ける予定という。「新たな街のスタイル確立の夢を書籍に託した。市内の商店街や行政関係者に見てほしい」と話している。A5判で、313ページ。3630円。県内の八文字屋各店で取り扱っている。

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