社説:コロナ「第9波」 インフルと同時対策を

 新型コロナウイルスの感染者数が高止まりしている。

 厚生労働省によると、全国約5千の定点医療機関から4~10日の1週間に報告された感染者数は1カ所当たり20.19人だった。京都は17.49人、滋賀は16.03人で前週より増加した。

 過去の傾向では秋ごろに減少していたが、今年は9月に入っても衰える兆しはなく、流行「第9波」の様相だ。

 加えて、季節性インフルエンザの流行も拡大している。昨年12月から流行開始の目安を超えたまま、新しいシーズンを迎えた。京都は8月下旬、滋賀は今月中旬から「流行入り」しており、各地で学級閉鎖が相次いでいる。

 いずれも、例年は年末年始にかけて感染が拡大する。同時流行で医療が逼迫(ひっぱく)することがないよう、重症者の治療体制や病床の確保、医療機関同士の連携を点検し、対策を強化する必要がある。

 厚生労働省は、10月以降のコロナ医療支援策を発表した。全額公費負担だった高額な抗ウイルス薬は、所得に応じて患者に最大9千円の自己負担を求める。入院費補助は、現行の半額の最大1万円に減らす。

 医療支援は当初、今月末が期限だった。規模を縮小した上で来年3月まで継続させることで、急な打ち切りによる医療現場の混乱に配慮した形だ。

 新型コロナの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に移行し、無料だった医療費に一部自己負担が生じるようになった。外来や入院に対応する医療機関に手厚くしていた診療報酬や病床確保料も減額された。

 重症化率の低下などを踏まえれば、特別扱いの縮小も一定理解できよう。ただ、患者の負担は増えることになる。低所得世帯などの受診控えや治療の遅れを招かないよう、流行や医療の状況に留意しなければならない。

 コロナワクチンの秋接種が、きょうから始まる。生後6カ月以上で初回接種を終えた全ての人を対象に年度内は無料だ。インフルエンザワクチンも原則有料で同時接種できる。

 重症化の予防には、ワクチン接種が今も有効とされる。併せて、一人一人が換気や手指消毒、うがいなどを心がけ、感染を広げないようにしたい。

 今月1日には、感染症対策の司令塔組織となる「内閣感染症危機管理統括庁」が発足した。同時流行への機敏な対応で存在感が示せるか、早速問われよう。

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