2023年10月から【ふるさと納税】がルール変更、駆け込む前に注意すべき4つのケース

例年であれば年末に取り組む方が多いふるさと納税ですが、2023年は10月に改正がある影響で、「変更される前の9月末までに取り組もう」という方もいるのではないでしょうか?

改正の概要を少しお伝えしておくと、返礼品に関わる以下のルールが加わります。

  • 募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とする
  • 加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める

これによる影響として、「同じ寄付額に対する返礼品の量が減る」「同じ返礼品に対する寄付額が上がる」「熟成肉・精米のうち地場産品でないものが返礼品から消える」などが考えられます。

少しでもお得に返礼品を受け取りたい方、地場産品以外の返礼品で受け取りたいものがある方などは、できるだけ変更前にふるさと納税を行っておこうとお考えでしょう。ただし、制度を理解していないと、変更前に駆け込みでふるさと納税をしても、「実は今年はやるべきではなかった」「控除上限額をオーバーしてしまった」ということもあり得ます。


ふるさと納税で節税はできない

そもそもふるさと納税は、希望する自治体へ寄付として納税をすることにより、自己負担となる2,000円を除いた金額が、本来支払う所得税および住民税より控除される、という仕組みです。ふるさと納税で節税できる、と思い込んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが、税金を一部先払いして、後から本来支払う予定の税金から控除してもらうのであって、支払う税金自体を減らせるわけではない、ということは覚えておきましょう。

つまり、そもそも支払う税金が少ない、もしくは専業主婦・主夫や無職で税負担がない方などにとっては、ふるさと納税を行うメリットはありません。ふるさと納税を始める前に注意が必要な4つのケースを紹介していきます。

ケース(1)今、お金に余裕がない家計

ふるさと納税を行う際には、寄付として実際の支出を伴います。貯蓄が十分でなかったり、毎月の収支が赤字になってしまったりしている家計においては、支出を増やすことは避けるべきです。家計改善を優先して取り組みましょう。

ふるさと納税をクレジットカードで決済する方も多いと思いますが、一度にまとめて行うとカードの引き落とし額が膨らんでしまいます。利用枠や引き落とし額に心配のある方は注意が必要です。また返礼品もまとめて届いてしまい、特に生鮮食品や冷凍品などが冷蔵庫に入りきらない、といったことも考えられるので、寄付する月を分けるなどの工夫もしていきましょう。

なお、勘違いしている方もいますが、ふるさと納税を行った金額から2,000円を除いた金額が、全て後から返ってくるわけではありません。還付されるのは、所得税の控除分のみとなり、例えば所得税率が10%の方が限度額内で5万円の寄付をした場合、還付額は下記のように求められます。

(50,000円 ― 2,000円) × 10% = 4,800円

また、還付を受ける際は、必ず確定申告が必要になります。確定申告が不要な「ワンストップ特例制度」を利用する場合、全額が住民税からの控除となることも覚えておいてください。

ケース(2)初めて住宅ローン控除を利用する人

住宅ローン控除は正式名を「住宅借入金等特別控除」と言います。個人が住宅ローンを利用し、一定の要件を満たして居住用の家を購入、増改築などをした場合に、年末の住宅ローン残高を基に計算した金額が、居住した年以後の各年分の所得税額から控除される制度です。

ふるさと納税との併用は可能ですが、控除の対象が重複しているため、併用することによる控除上限額の変化に注意が必要です。ふるさと納税による寄付金控除が優先して適応されるため、本来控除されたはずの住宅ローン控除が引ききれず、手出しが増えてしまった、という事態は避けたいものです。

収入状況により影響を受けないケースもありますが、ふるさと納税サイトの詳細シミュレーションで住宅ローン控除を入れた上で試算をし、適応後の控除上限額を確認してから取り組みましょう。

住宅ローン控除の適用を受ける1年目は確定申告を行うことが必須条件となっているため、ふるさと納税の控除申請にワンストップ特例制度を利用することはできません。誤ってワンストップ特例制度を利用していた場合は、確定申告を行う際にふるさと納税の申告を改めて行います。

なお2年目以降は、年末調整で住宅ローン控除の手続きを行う方は、他に申告が必要なものがなければ確定申告は不要となりますので、ワンストップ特例制度を利用することが出来るようになります。

ケース(3)退職・転職・産休などで収入状況が変わる人

転職や退職をした方、休職をしていた期間がある方は、所得税率などが変化し、控除上限額が変わる可能性があります。今年の収入目安金額でシミュレーションを行い、控除上限額を確認しましょう。なお退職金を受け取った場合、退職金にかかる住民税はふるさと納税の控除対象外ですので、シミュレーションをする際には含めません。

産休・育休を取得中の方も、ふるさと納税を行うことができます。ただし、年収が下がっている場合は控除される金額も下がりますので、シミュレーションで確認をしましょう。

出産に関する手当金として出産手当金や、育児休業給付金などがありますが、これらの手当金は非課税所得であるため、所得税や住民税といった税金はかかりません。そのため、シミュレーションをする際には手当金を年収に含めないようにしてください。

おおまかな目安として、年収200万円を超えるくらいから、ふるさと納税のメリットがあると言われています。しかし、出産に伴い医療費控除などを利用する場合は、さらに控除上限額が変わってくるため、詳細なシミュレーションが必要です。

ケース(4)控除を受ける人と決済名義の相違にも注意

ふるさと納税の控除を受ける本人以外の家族が手続きを行うこと自体は、本人の了承を得た上であれば問題ありません。ただし、注意が必要な点もあります。

まずはふるさと納税サイトに登録をする際に、控除を受ける本人の名前と住民票住所で登録をすること。それから支払う際の決済名義です。

ふるさと納税は原則、控除を受ける人と決済をする人は同一でなければならないと定められています。クレジットカードやPayPayなどのQRコード決済サービスを利用することもできますが、決済サービスの名義人とアカウントの名義人ともに控除を受ける本人であることが必要です。控除を受ける人と決済名義が同一でない場合、無効となり控除を受けられない可能性もありますので、支払い時には注意をしましょう。

ただし例外もあります。クレジットカードの引き落とし口座が控除を受ける本人名義である場合です。

例えば、ふるさと納税の控除を受けるのは夫であるが、妻名義のクレジットカードで決済をし、カード代金の引き落とし口座の名義が夫である場合、支払者は本人と同一と見なされるため問題ありません。

なお誤って控除を受ける本人以外の名義で決済をしてしまった場合、サイト上ではキャンセルができない可能性が高いため、寄付先の自治体に速やかに連絡をして相談しましょう。


紹介した4つのケースに当てはまらなかったとしても、今年利用できるふるさと納税の金額は、今年の最終的な年収と、他に利用する制度などにより変わる可能性があります。少しでもお得に利用できるならば……と、9月末までにふるさと納税を済ませたくなるかもしれませんが、控除上限額のギリギリまで利用を進めることはお勧めしません。

今年の控除上限金額をシミュレーションで確認した上で利用を進めていき、年末に収入などの状況がおおよそ確定した段階で最大利用する金額を決めることで、「やるべきではなかった」と後悔しないようにしましょう。

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