アメリカの大学でテニスをしたいと
考えているジュニアはぜひ参考に!
高校卒業後、テニスを本格的に志す場合の進路として、プロに直接進む場合と大学を経由する場合が考えられる。現在は大学を卒業してからプロになる選手も活躍しており、ジョン・イズナー(アメリカ/世界ランキング33位)やケビン・アンダーソン(南アフリカ/同102位)などが現役で活躍している。今回は、アメリカの大学テニスの仕組みや大学でテニスをするメリット、また大学卒業後にプロになった選手について紹介する。
アメリカの大学テニスの仕組み
スポーツに力を入れているアメリカの大学は、NCAA(National Collegiate Athletic Association)という組織に所属しており、このNCAAはさまざまなスポーツ競技の運営とルールを定めている。NCAAに所属する大学は強いほうからディビジョンI、ディビジョンII、ディビジョンIIIに分けられ、その中で試合が行われる。男子テニスでディビジョンIに入っている大学は以下の通りだ。『US News』によるアメリカの大学ランキング(National universities ranking/入学した後に卒業した人の割合、学部や大学院の評判、生徒のレベルなどによって総合的に判断)の順位もあわせて表示した。
NCAA男子テニス・ディビジョンI
2021年1月14日時点のランキング
(※カッコ内は『US News』の2021アメリカ大学ランキング順位)
1位 南カリフォルニア大学(24位)
2位 ノースカロライナ大学(28位)
3位 オハイオ州立大学(53位)
4位 ミシガン大学(24位)
5位 スタンフォード大学(6位)
6位 テキサスクリスチャン大学(80位)
6位 テキサス大学(42位)
8位 ノースカロライナ州立大学(80位)
9位 フロリダ大学(30位)
10位 ジョージア大学(47位)
11位 テキサスA&M大学(66位)
12位 ウェイクフォレスト大学(28位)
13位 テネシー大学(112位)
14位 オクラホマ州立大学(187位)
15位 ベイラー大学(76位)
16位 セントラルフロリダ大学(160位)
17位 ミシシッピ大学(160位)
18位 カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(20位)
19位 コロンビア大学(3位)
20位 サウスカロライナ大学(118位)
21位 ペパーダイン大学(49位)
22位 バージニア大学(26位)
23位 デューク大学(12位)
24位 テキサス工科大学(217位)
25位 ケンタッキー大学(133位)
上記のリストには、アメリカの大学ランキングにおいてトップ50にランクインしている大学が半分以上ある。スポーツが盛んな大学は、学業面においても非常に優秀であることがわかる。
大学でテニスをするメリット
人生において必要な学びを得ることができる
テニスにおいて活躍する選手は、幼い頃からテニスに多くの時間を費やしてきた場合が多い。中には早いうちからオンラインスクールに切り替え、世界中で開催されるトーナメントを転戦してきたケースも多く見られる。個人競技であるテニスを通じ、他では身につけられない高い自主性や独立心を培うことができるが、社会生活における学びが得にくいという場合もあるだろう。
大学でテニスをする大きなメリットとして、チームとして活動することで社会性を身につけることができる点が挙げられる。また試合に勝つだけでなく、チームメイトとの関係も大切になるだろう。それから、大学においては学業も当然、必要になる。学業をおろそかにすると試合に出られなくなることもあるため、選手は必死に勉強をする。大学在学中はテニスとあわせ、知的な欲求も満たすことができる実に内容の濃い時間を過ごすことができる。
名門校に入学できる可能性がある
前述したように、テニスが強い大学は学業面でも優れている場合が多い。日本でも有名なスタンフォード大学やコロンビア大学も、ディビジョンIにカテゴライズされている。これらの大学に入学するためには通常、高いGPA(Grade Point Average/高校での成績)やSAT(Scholastic Assessment Test/大学進学希望者を対象とした共通試験)の成績が必要になる。留学生の場合はTOEFLのスコアも基準をクリアしなければならない。このように学業だけで入学するのが非常に難しい大学であっても、テニスでの結果が評価されれば入学に有利に働く場合が多い。
プレッシャーが強いプロの世界においてよりどころとなる
プロの世界で戦うプレッシャーは計り知れない。「自分にはテニスしかない」と思って戦うことがより自分を強くしてくれるという側面もあるが、一方で、それに押しつぶされてしまう選手もいる。そんな時、大学の学位が気持ちのよりどころとなるかもしれない。テニスに限らず、アスリートにとって大きな敵であるバーンアウトも、10代のうちにテニスだけに打ち込む生活に入るよりも、リスクを減らすことができそうだ。
ともに戦う仲間ができる
テニスは、基本的に孤独なスポーツだ。そのことに変わりはないが、チームの一員として戦い、ともに勝利を喜び合える仲間ができるのも大学テニスのメリットだ。試合で遠征する際も、一人で行くより楽しく過ごすことができるだろう。
ちなみに香港では、小学校から学校対抗のテニストーナメントがある。中学、高校と年齢を重ねるにつれ、学校の代表としての意識が強まっていく。学校側も、テニスの結果が出ている選手を積極的に採用しており、このような学校は学業的にもトップ校である場合がほとんどだ。香港のトップ校はアメリカの大学と非常に強いコネクションを持っており、ハーバード大学に優秀なテニス選手を進学させたりしている。そのため、幼い頃からテニスで活躍している子どもの親はこのような未来を見越している場合も多い。
大学を出てプロになったトッププレーヤー
大学を出てからプロになり活躍した選手といえば、男子ではビッグサーバーのイズナー(ジョージア大学)やアンダーソン(イリノイ大学)らが挙げられる。また、すでに引退しているが、ダブルスのレジェンドともいえるブライアン兄弟(マイク・ブライアン、ボブ・ブライアン)もスタンフォード大学に奨学金を得て進学している。
女子では、今年の全豪オープンで決勝へ進んだジェニファー・ブレイディ(アメリカ/同15位)がUCLA(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校)を卒業。ダブルスで活躍を見せている日本の柴原瑛菜(橋本総業HD/ダブルス世界ランキング13位)もUCLAに進学している(休学してプロ転向)。また、昨年の全仏オープン覇者のイガ・シフィオンテク(ポーランド/同9位)は、これまでもテニスと学業を両立してきたとしており、数年はテニスに集中するものの、その後大学に行くというチョイスも考えているようだ。
プロになってから学び直す選手も
女子の世界ランキング12位のガルビネ・ムグルザ(スペイン)は、ハーバード大学のビジネスコースを修了している。同コースはテニス選手に人気があり、元世界ランク1位のキャロライン・ウォズニアッキさんやママとしてツアーに戻ってきたビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ/同14位)も学んだことがある。彼女たちの姿勢は、知的好奇心を満たす活動を始めるのはトッププレーヤーになってからでも遅くはない、ということを証明してくれている。
さまざまな可能性を残しておきたい
テニスを愛するジュニアにとって、時に学業は邪魔に思えることがあるかもしれない。しかし多くの可能性を残しておくことは、後々自分のためになるのは間違いないだろう。アメリカの大学は奨学金制度も充実している。大学に進学したうえでテニスを続けることを早いうちから視野に入れておくと、過剰なプレッシャーを上手にかわしながら長くテニスを続ける礎を築けるかもしれない。