シフィオンテクやシャポバロフ、ダニエル太郎らが実感したメンタルトレーナーのメリット

テニスはメンタルコントロールが

重要なスポーツ

多くのテニスプレーヤーが、試合中いかにメンタルをコントロールし、怒りや恐れを克服するかの重要性を理解している。現在世界ランキング9位で20歳のイガ・シフィオンテク(ポーランド)や、同12位で22歳のデニス・シャポバロフ(カナダ)は、メンタルトレーナーが自らにもたらしたメリットについて語っている。実際にメンタルトレーナーがどのような仕事を行っているのだろうか、またメンタルトレーナーを依頼した際の費用やプレーヤーにとってのメリットなどを紹介する。

「テニスを楽しみ、感謝するようになった」

と語るダニエル太郎

まずは選手の実体験を元に、メンタルトレーナーから得られるメリットについて。昨年の後半から、メンタルトレーナーを採用したダニエル太郎(エイブル/同103位)。今年4月に行われたATP250「セルビア・オープン」では、準決勝でマッテオ・ベレッティーニ(イタリア/同9位)からセットを奪う活躍を見せたが、その際にメンタルトレーナーについて言及している。ダニエルは、メンタルトレーナーとの取り組みの中でこれまでと変わった点として、「テニスを楽しみ、感謝するようになった」と語っている。ポジティブな心境の変化は、大きなブレークスルーにつながることもある。そのため、ヨガやメディテーション(瞑想)をトレーニングの一環として行う選手も多い。

レゴやおもちゃを使って

メンタルトレーニングするシフィオンテク

昨年の全仏オープンを制した後、今年2年のWTA500「アデレード・インターナショナル」でも優勝を飾り活躍しているシフィオンテク。彼女も、自身の活躍の背景にスポーツ心理学者であるダリア・アブラモビッチ氏によるサポートが大きく影響していると語っている。このアブラモビッチ氏は、自身もボートのアスリートであった経験があり、また年齢もまだ若いため、高校を卒業して間もないシフィオンテクにとっても親しみやすい存在なのだろう。2人のインスタグラムには、お互いに関する投稿が多く見られ、関係のよさがうかがえる。

シフィオンテクは、メンタルトレーニングの一環として、レゴや説明書を使って組み立てるようなおもちゃを使っている、としている。論理的な思考を持つ彼女にとっては、このような取り組みがテニスにおいても効果的なようだ。

シャポバロフはメンタルトレーニングすることで

「自分らしいプレーが継続できる」と話す

キャップを後ろにかぶるファッションや音楽のラップをこよなく愛することなど、テニス以外にも何かと話題の多いシャポバロフ。彼の現在のコーチは、自身の母親に加えロシア人でキャリアハイ8位のミカエル・ユーズニー氏だ。ユーズニー氏とシャポブロフの関係は非常に良好で、シャポバロフは自身のインスタグラムにユーズニーへの感謝を述べたり、頻繁に写真を掲載したりしている。そんなユーズニーコーチの勧めにより、シャポバロフはメンタルコーチを採用。シャポバロフはメンタルコーチの仕事に対して非常に満足しており、試合中に怒りなどの感情をコントロールし、自分らしいプレーを継続するのに役立っていると語っている。

気になるメンタルトレーナーの費用

シフィオンテクのようにツアーにスポーツ心理学者を帯同しなくても、インターネットや電話を使ってメンタルトレーナーのサポートを受けることは可能だ。カリフォルニアのシリコンバレーに拠点を持つスポーツ心理学者は、対面、電話、オンラインでのコーチングを行っており、ゴルフ、バトミントン、テニスなどの選手に対してコーチングを行っている。費用は、アマチュアの選手で1時間125ドル、日本円にすると約14,000円だ。ただ、コーチの費用には人によって大きな差があり、人気や実績のあるコーチは当然費用が高くなる傾向がある。筆者の知人であるアマチュアゴルフプレーヤーが利用している心理学者のトレーニング費用は、1時間の電話で5万円以上かかるそうだ。

そのほかにも、「Woebot」などのアプリを使ってメンタルヘルスについて学ぶことも可能だ。スポーツ心理学に特化しているわけではないが、物事の捉え方や睡眠の重要性などメンタル面の健康についてボットが楽しく教えてくれる。「Woebot」は今のところ無料で利用することができる(※言語は英語のみ)。

メンタルトレーナーの仕事内容はさまざま

トレーナーによって仕事の進め方はさまざまだが、前述のシリコンバレー在住のトレーナーを例に内容を見てみよう。トレーナーの仕事は、まず現時点で選手が持っている心理面をコントロールするスキルを確認することから始まる。そして、その結果を元に、選手の目標合わせて今後どのような取り組みが必要であるかを共有する。過去の試合のレビューや今後の試合の準備も行う。メンタルの強化は1時間のトレーニングで大きな成果が出るようなものではないため、日ごろの心がけや練習方法などを学んだうえで、継続して行っていくことが重要になる。そのためメンタルトレーナーを採用する際は、長い時間をともに過ごすことを想定して、自分と合っている人を見つけることが大切だ。

メンタルはフィジカルと表裏一体

テニスプレーヤーのみならず、私たちのメンタルとフィジカルは表裏一体である。どちらかに問題があれば、少なからずもう一方にも影響が出てくる。スポーツの技術を高めようとする場合、ついフィジカル面にばかり力を入れメンタル面をおろそかにしがちだ。だが、上記のようにプロがこぞってメンタルトレーナーを採用し、その効果を実感しているところからも、スポーツにおいてメンタル面を強化することがいかに大切かわかる。長くテニスを続けていくためにも、メンタルのケアを行う方法を早いうちから学んでおくことは、後々大きな助けとなるだろう。

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