【解説】高松市が放課後児童クラブを民間委託へ 全国で委託が広がる背景は? 専門家「支援員の質の担保が重要」

「放課後児童クラブ」について解説します。放課後児童クラブを巡っては、高松市が2024年度から全ての公立のクラブの運営を民間に委託することを決めました。この公立クラブの運営を民間に委託する流れは、全国的に進んでいます。

「こうざいっこ教室」は、高松市の香西小学校の敷地内にある公立の放課後児童クラブです。ここでは支援員と補助員、合わせて9人の大人で子どもたちをみています。

「こうざいっこ教室」を利用する子どもはここ数年増えていて、2015年は83人でしたが、2023年は104人となっています。

(こうざいっこ教室/大石範子 支援員)
「業務量は増えました。例えば、まめにお母さんにお知らせしたい手紙とか、そういうのを作る時間が足りなくなりました」

高松市では現在「支援員」が不足しています。2023年4月時点で高松市立のクラブは106教室あり、このうち102教室を直接運営しています。高松市は111人の支援員が必要としていますが、実際には8人不足。現在は、補助員たちでカバーしている状態だということです。

(こうざいっこ教室/大石範子 支援員)
「この教室は欲しいだけいただいています。ただ、何か起こった時に人が足りないなって思う時はありますね。アクシデントとかありますので」

そんな中、高松市は2024年度から公立クラブの運営業務を民間に委託します。

民間委託した場合、これまで高松市が雇っていた支援員や補助員は、委託先の事業者が雇う形に変わります。

高松市は、民間委託によって、クラブ間での人材のやりくりや広く求人ができるようになり、安定的にスタッフを確保したいとしています。また、民間のノウハウを取り入れて事務の効率化や利便性の向上も目指します。

一方、放課後児童クラブの入会の決定や利用料の徴収などは、引き続き高松市が担います。

このような放課後児童クラブの「公立民営」化は、全国的にも進んでいます。

厚生労働省のまとめによると、放課後児童クラブの数は2012年から2022年にかけて約5600カ所増加。設置・運営主体の内訳をみると、「公立公営」は1100あまり減少し、「公立民営」は4000以上増えました。また、割合でみても、2022年は全体の約半数を「公立民営」が占めました。

香川県では、17の市と町のうち10の市と町が民間に運営を委託しています。

ただし、民間委託を巡っては、クラブを利用する保護者から不安の声があがっています。

(保護者は―)
「時間帯とか、今までと同じように預かっていただけるかというのが一番なので不安はある」
「先生(支援員)がガラッと変わったりするなら、どんなふうになるのか。子どもたちも慣れるかとか、やり方も変わるだろうし」

自らも支援員の経験がある岡山大学教育推進機構の中山芳一准教授は、保護者の不安を払拭するためには「支援員の質」の担保が重要だとしています。

(岡山大学 教育推進機構/中山芳一 准教授)
「そこに勤める人によって明暗が分かれちゃう。今、素晴らしい取り組みをしている支援員たちは、絶対に辞めさせちゃだめだし、そういう人たちばかりであるなら、継続雇用を全面的に打ち出すべきでしょうし、それが一番親の安心感につながる」

東かがわ市は、支援員の不足を解消しようと、2020年度から全ての公立クラブの運営を、シダックスのグループ会社で全国で放課後児童クラブの運営などを行う「シダックス大新東ヒューマンサービス」に委託しています。

支援員の竹内さんは、民間委託前の2019年から子どもたちを見守っています。

(大内うみ放課後児童クラブ/竹内芳枝 支援員)
「市の職員としてお仕事に入ったものですから、それが無くなると、民間さんのほうになるということで、どうなるんだろうという不安はありました」

委託後、「シダックス大新東ヒューマンサービス」は、新たに人材を雇用するなどして、東かがわ市全体で支援員や補助員を約30人増員。竹内さんが働いているクラブでも、1クラスあたりの大人が、それまでの2~3人から、委託後は5人ほどに増えたそうです。質を担保するために、支援員・補助員向けの研修も定期的に行われています。

(大内うみ放課後児童クラブ/竹内芳枝 支援員)
「あっちでガヤガヤ、こっちでガヤガヤってなる。そうしたらやっぱり、1人2人では目の届かないところでも、それぞれに先生がついてくれるので安心」

さらに……。

(大内うみ放課後児童クラブ/竹内芳枝 支援員)
「民間になって、本社から季節ごとに子どもたちへって、遊びのセットが送られてきたりする。それがやっぱり行政だけの時には、そういう点にも及ばなかった」

また、運営を委託している東かがわ市は、職員が月に2回程度、クラブを回って子どもたちの様子を確認しています。この取り組みは、民間委託前から続けています。

(岡山大学 教育推進機構/中山芳一 准教授)
「仮にどこかの民間に委託しても、責任を取るのは市。(行政の)丸投げはだめです」

高松市は、現在働いている支援員や補助員について、本人が希望すれば継続して働けるとしています。また、相談員が各クラブを巡回する取り組みを、委託後も続ける方針です。

高松市は、今後、民間事業者を公募し、10月下旬ごろに事業者を決定するとしています。決定後は、11月以降に保護者や支援員への説明会を行う予定です。

放課後児童クラブを巡っては「待機児童」も問題になっています。高松市は2023年5月時点で82人、岡山市では193人の待機児童がいます。待機児童の解消には「受け皿の確保」が必要ですが、そのためにも、子どもたちをみる支援員たちの確保は欠かせません。

© 株式会社瀬戸内海放送