あのおこしやす京都ACが関西2部降格へ…とどめを刺した守山侍の「流経大黄金世代FW」と「元京都サンガの俊英」

9月18日に行われた2023年度の関西サッカーリーグ最終節。天皇杯でサプライズを起こした「おこしやす京都AC」が、なんと最下位で原則的に2部へと降格することになった。

残留できる可能性もあるものの、それは「関西サッカーリーグから2チームがJFLに昇格した場合のみ」である。

18日の月曜日に開催される最終節を前に、おこしやす京都ACは2勝6分け5敗の勝点12と低迷。残留のためには勝利した上で他会場の結果を待たなければならなかった。

そして、そのおこしやす京都ACと対戦した守山侍2000も安泰の状況にはなかった。13試合で4勝3分け6敗。後半戦で失速したために黒星がかさみ、引き分けでも他会場の結果次第で降格となる可能性が残っていた。

両者ともに勝たなければならない試合とあって、どちらも気合が入ったスタートに。どちらもチームの良さを見せる中、先制ゴールを決めたのはアウェイの守山侍2000だった。

35分にリスタートからの早い展開で左サイドの裏を取った守山侍。岡田優樹が抜け出してボールを失ったところを、元京都サンガF.C.の伊藤優汰がサポートした。そこからの左足のクロスがファーポストに送られ、三田尻知輝がクリーンなヘディングでシュート。見事にゴールを陥れた。

おこしやす京都ACにペースが移ったのは終盤。試合最後の20分ほどはボールを圧倒的に保持して一方的に攻め続けるような展開となったものの、このシーズンを象徴するようにゴールだけが決まらず。

そして試合は0-1で終了し、守山侍2000が勝点3を奪取して関西サッカーリーグ残留が決定。さらに混戦だったことで8チーム中4位までランキングを上げてシーズンを終えた。

一方のおこしやす京都ACはこれによって関西サッカーリーグ最下位が決定し、JFL昇格クラブが2つ出ない限りは2部へと降格することになった。

「ブレなすぎた」おこしやす京都ACの苦悩

今シーズンを前に、かつてU-17日本代表を率いてワールドカップを戦った吉武博文氏を新監督に迎えたおこしやす京都AC。チーム内にも大きな変革が断行され、選手は全員がクラブの親会社であるスポーツXの社員兼任プレーヤーとして雇用されることになった。

営業活動や普及などに従事しながらサッカー選手としてのキャリアを追求するという「デュアルキャリア」のチームとして生まれ変わり、20人の少数精鋭でシーズンに臨んだ。

その環境も生かして地域リーグでは異例の長期キャンプを行い、3月5日に行われた京都FAカップがトレーニングマッチを含めても初の対外試合となった。

この試合では京都府リーグのウラノスを相手に3-0で勝利を収めたものの、前半はノーゴールと苦戦した。

既存の選手についてはポジションをシャッフルし、昨季センターバックだった西村洋平をウイングやウイングバックに起用したほか、本来サイドバックの大原彰輝もアタッカーとして出場。

一方阪南大学でストライカーを務めていた康起甫(カン・キボ)を3バックの中央にコンバートし、いわゆる「全員守備全員攻撃、ポジションレスのポゼッションサッカー」を追求した。しかし、その中でシーズンを通して課題は明白なものになった。ボールは繋がるがいい形でシュートに持ち込めず、逆にカウンターから失点を喫する。

その状況は開幕から最終節まで打開することができず、この守山侍2000との試合でも変化を生み出すことができなかった。

おこしやす京都ACはこのあと京都府の代表として国民体育大会に臨む他、10月から開幕する「The KSLアストエンジカップ」という大会に出場する。そこで新たな姿を見せることができるのか、1年での昇格を視野に入れてどのようなサッカーを繰り広げるのか、注目となる。

一太刀浴びせた守山侍。元京都サンガの天才と流経大黄金世代のFW

そして、おこしやす京都ACを破って1部残留を決めたのが滋賀県の守山市に本拠地を置いている守山侍2000。

関西サッカーリーグに初昇格してから2年目のシーズンであるが、群雄割拠のコンペティションで確かな実力を発揮している。今季はJFL昇格に繋がる全国社会人サッカー選手権大会(通称『全社』)にも初出場する(以前出場権を獲得した際は大会自体が中止になったため)。

今回の試合で決勝点を決めた三田尻知輝(みたじりともき)は、1999年生まれの23歳。守山北高校から流通経済大学に進んだストライカーである。

この年代は満田誠や仙波大志(ともにサンフレッチェ広島)や佐々木旭(川崎フロンターレ)、安居海渡、宮本優太(ともに浦和レッズ)、佐藤響(京都サンガFC)など、12名ものJリーガーを産んだ「流経大黄金世代」。同じ守山侍に所属している藤田昂陽も同級生であり、彼らは群雄割拠の大学サッカーを過ごした選手である。

ルーキーイヤーに8ゴールを決めて得点ランキング2位となったものの、今季はこの試合を含めて4ゴール。苦戦のなかでチームを救ったエースの三田尻は以下のように話していた。

三田尻知輝

「『今日決めなかったらいつ決めるんだ』というところでした。自分のゴールでチームを勝たせたかった。そう言い聞かせて試合に入りました。伊藤優汰選手はJリーグでもやっていた選手なので、あそこに絶対クロスが入ってくると思っていました。あとは飛び込むだけでした。優汰くんに感謝です。

昨季と今季でそれほど違いはないんですが、相手のディフェンダーからのプレスも強くなりましたし、潰される場面も多かったんです。そこで打開できればよかったんですが、苦しんだシーズンでした。

このあとは全社がありますが、守山侍は守山侍らしく全国でどこまでいけるかチャレンジしたいです。一戦一戦頑張っていきます」

また、そのゴールをアシストしたのは伊藤優汰。かつて京都サンガFCでデビューし、アルビレックス新潟やカターレ富山でJリーグを戦ったアタッカーである。

プロとしての生活には見切りをつけたものの、指導者としての活動と並行して昨年守山侍2000でピッチに復帰。この試合では慣れ親しんだたけびしスタジアム(旧西京極陸上競技場)で、1000人近くのファンの前で確かな技術を披露した。

伊藤優汰

「お互いに負けたら終わりという試合で、意地と意地のぶつかり合いでした。技術のところは置いておいて、これだけ入ったお客さんに熱い試合が見せられたのはよかったですね。西京極では去年も1試合やらせてもらったんですけど、自分の中でも本当に思い入れのあるピッチなので、ここで勝ててよかったです。

いいプレーもありましたが、体力的にはかなりしんどいですね(笑)。現役時代からすれば半分以下になっていますけど、そのなかでチームメイトが助けてくれて、よく体を張ってくれました。

降格して全社に行くよりは、残って、一致団結して出場できるのはいいですね。全国でもサムライらしさを見せて頑張ります」

守山侍2000が出場する全国社会人サッカー選手権大会は10月21日に佐賀県で開幕するトーナメントで、5日間で最大5試合を行うという「世界で最も過酷な大会」である。4位以内に入れば、JFL昇格に繋がる地域サッカーチャンピオンズリーグへの出場権が獲得できる。

もし守山侍2000を含めた関西リーグのクラブが2チーム昇格すれば、おこしやす京都ACは繰り上げで1部に復帰することができる。そのため次は関西の関係者全員が彼らを応援することになるだろう。ちなみに守山侍2000の初戦の相手はあの間瀬秀一監督率いるFC WYVERNである。

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守山侍2000は現在その大会に向けて活動資金の寄付や支援を求めており、SNSなどで呼びかけを行っている。お問い合わせはクラブ公式サイトまで。

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