発がん性指摘の有機フッ素化合物、明石川流域の住民から検出 9人中6人が基準値超え 京大名誉教授らが発表

調査結果を発表する小泉昭夫京大名誉教授(左)と丸尾牧兵庫県議=21日午後、明石市役所

 発がん性などが指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)について、明石川流域で暮らす明石市民の血中濃度を調べた結果、9人中6人から健康を害するリスクが生じるとされるドイツの基準値を超える数値が検出されたことが、21日分かった。京都大の小泉昭夫名誉教授(環境衛生学)と、丸尾牧兵庫県議(尼崎市選出)が明らかにした。

 調べたのは、PFOS、PFOAなど、4種類の有機フッ素化合物の数値。両氏によると、明石市の9人は、市内の2浄水場(明石川、鳥羽)から上水を供給される地域に10年以上暮らす13~76歳の男性2人、女性7人。特に高かったのが、工場排水などが原因と考えられるPFOAの数値で、6人がドイツの基準(血液1ミリリットル当たり10ナノグラム)を超え、最大で27ナノグラム、平均13.4ナノグラムに達した。

 この平均値は、一部浄水施設で取水を停止した東京・多摩地区で実施された調査の平均3.8ナノグラムと比べても格段に高い。PFASは国際的に問題が指摘されているが、国内では血中濃度に関する基準が定められていない。

 今回の調査では、最年少の13歳からも基準値を超す数値を検出した。体内に蓄積されるPFASは高齢者ほど数値が高い傾向があり、小泉氏は「明石では若い人が高いことが特徴的。飲み水の影響が考えられる」と分析。「ただちに病気に直結する数値ではないが全体把握が必要」とし、最低300人以上の市民への調査などを市に申し入れた。

 明石川浄水場の水道水からは2020年、厚生労働省が全国39浄水場で実施した調査で、PFOSとPFOAの国の合計目標値(暫定)の水1リットル当たり50ナノグラムには達しないものの、46.4ナノグラムと全国で最も高い数値が検出された。一方、明石川、鳥羽の2浄水場の今年6月の数値は5~7ナノグラムと低くなっている。

 また、尼崎市でも7月に同様に調査し、10人中2人が基準値を超えたが、いずれも明石市より数値は低かった。(松本寿美子) 【有機フッ素化合物】少なくとも4700種が存在し、PFASと総称される。水や油をはじく性質があり、食品の包装、フライパン、カーペットなどや、泡消火剤、半導体製造に使われてきた。一部では、発がん性など毒性が報告された物質から別の物質へ代替されている。化学的に安定して極めて分解されにくいため環境中に長期間残留し、水や食べ物などを通じて人や動物の体内に蓄積する。欧米では腎臓がんや発育不良などのリスクが懸念されており、米国では住民や州政府がメーカーを相手取った訴訟を起こしている。

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