大分トリニータ 復調の弓場将輝がチームをけん引する 【大分県】

前半戦はチームの好調と並走して、中盤の底で欠かせない存在となったプロ3年目の弓場将輝は順調に経験を重ねていた。豊富な運動量で中盤を動き回り、パスの出し手にも受け手にもなる。相手より一歩先に出てボールを奪う確かな技術もある。しかし後半戦は調子を落とし、先発から名前が外れるようになると、チームはボランチのポジションを固定できず低迷していった。

「考え過ぎた部分がある」と弓場はいう。これまでは自分の持ち味を存分に出すことだけを考えていたが、味方の良さも引き出そうと攻守両面で周りとうまく連係しながら、周囲を生かす戦術に捉われるようになった。周囲を動かし、ボールを奪えるように相手を追い込みながら、強度の高い寄せでボールを奪い切る。狙いは正しかったが、徐々に持ち味であった運動量が落ち、走行距離が短くなった8月あたりから出場機会が少なくなった。

笑顔が戻った弓場将輝

試合に出られない悔しさは日を追うごとに増したが、改善策を見いだせず焦りにつながった。苦しむ弓場に手を差しのべたのが、岩瀬健ヘッドコーチだった。今月は個別に2度の個人ミーティングを行い、弓場の好調時のプレーを動画にまとめ、走行距離やアタック回数など数値化した。その上で長所と足りないものを明確にしたことで、頭を整理させた。客観的に自分のプレーを見直した弓場は、「一つ一つのプレーを考えながらこなすことも必要だが、強度を高く保つことや長い距離を走ることが僕には求められている。勢いというか思い切りの良さを忘れないようにしたい」と原点回帰した。

前節の徳島戦では3試合ぶりに先発出場。試合勘に不安はあったが、後半はトップギアに切り替え、セカンドボールを回収し、ボールを奪えばそのまま相手ゴール前まで運ぶ場面が増えた。弓場の推進力が攻撃の足がかりとなり、チームに勢いをもたらした。弓場と近い位置でプレーする野村直輝は「ボールを奪いに前に出るストロングは出たが、味方からのパスを引き出す動き、そこから展開するパスの種類、ボールをキープして試合をコントロールするうまさが足りない。周りを引っ張り、いい影響を与えられるようなプレーを意識する必要がある」と厳しく評価したのは期待しているからこそ。弓場は「チームを勝たせる選手になりたい」と野村が常に口にする言葉を使うようになった。残り7試合、チームをけん引する覚悟の現れだ。

ピッチを縦横無尽に駆け回る

(柚野真也)

© オー!エス! OITA SPORTS