淡路島の大観音像、解体・撤去工事が完了 国は売却視野 地元は活性化へ跡地利用を模索

世界平和大観音像が撤去された跡地(奥)。高台の頂上部に更地が見える=淡路市釜口

 国が進めていた兵庫県淡路市釜口の世界平和大観音像の解体、撤去工事が全て終了した。高さ約100メートルの神々しい姿は跡形もなく消え去り、今後は跡地利用に注目が集まる。地元住民は協議団体を設け、アンケートなどを実施。同市の門康彦市長も住民の声に耳を傾けながら策を練る。国は今後、土壌調査や不動産鑑定などを経て土地の売却を検討する。(内田世紀)

 観音像は、大阪で富を築いた淡路市出身の男性が建設し、1983年にオープン。展望台から大阪湾を望むことができ、85年の大鳴門橋開通後、多い日では1日に約4千人が訪れる観光名所になった。

 しかし、88年に男性は死亡。さらに相続した家族が2006年に亡くなると、遺族は相続を放棄した。

 所有者がいなくなったため、施設は閉鎖され、徐々に荒廃した。不安を感じた住民は市に改善を求める要望書を提出。市は11年に内部を調査するなどしたが、民間施設のため根本的な解決にはつながらなかった。

 老朽化はさらに進み、14、18年には台風で外壁が落下。20年には男性が展望台に上がり、飛び降り自殺する事案も起きた。

 そうした中、大阪家庭裁判所は相続財産管理人を選任。18年に相続人は存在しないと確定した。債務の清算などが終わったことから民法の規定に基づき、20年3月に国の所有となった。

 国は解体・撤去を計画。山門や十重の塔など敷地内のほかの建物も含め、3年ほどかけて除却する方針を示した。

 観音像本体の解体は21年6月に始まった。足元から足場を組み、22年の年明けには頭まですっぽりと覆われた。その後、上部から順に壊していき、同年5月には像を撤去。続いて台座部分も解体して地中の基礎まで全て取り除き、今年5月30日、工事を終えた。

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 解体決定を機に、地元・釜口地区の町内会代表者らでつくる「世界平和大観音像跡地利用を考える会」が発足。住民を対象にアンケートを実施した。

 集まった利用案は、老人ホームなどの福祉施設▽救援物資の保管や災害対策訓練ができる防災施設▽ホテルやレストランなどの観光関連施設▽高齢化社会を踏まえた納骨堂-など。

 同会の五条勉会長(65)は「いずれにしても地域が元気になるような利用法にしたい」と模索する。

 国は25年度中に、地下埋設物の調査や不動産鑑定評価を実施。その後、兵庫県や淡路市の取得要望について確認し、希望がない場合は一般競争入札を行う。売却価格などは未定という。

 門市長は「大阪・関西万博に出展した県などのパビリオンの移設や、市内企業から要望が多い住宅開発など、利用案には複数の候補がある」と説明。「住民の希望を生かすためにも市が購入する方がよい」と跡地取得への意欲を強調した。

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