ジェンヌへの道を手伝い…31年で幕 宝塚音楽学校受験スクール「スタジオトップハット」閉校

宝塚音楽学校の受験スクールを閉校した元タカラジェンヌの日比野桃子さん=宝塚市南口2

 元タカラジェンヌの日比野桃子さん(75)=兵庫県宝塚市南口2=が約31年間、同市内で続けてきた宝塚音楽学校の受験スクール「スタジオ トップハット」が7月に閉校した。これまでに俳優の遼河はるひさんら約100人を音楽学校へ送り出してきたが、「体が元気なうちに自分の時間を持ち、今後の人生を楽しみたい」と決断。惜しまれる中、全国的に名前が知られる「看板」を下ろした。(西尾和高)

 日比野さんは1968年に宝塚音楽学校を卒業。歌劇団では「みさとけい」の芸名で男役として活躍した。81年に退団した後、歌劇団初の女性演出助手として舞台運営を担ったが、7年後、父親が大病を患ったため、歌劇の舞台からいったん離れた。その後は東京で芝居など舞台作品の創作、上演に励みながらも、宝塚歌劇への思いは変わらなかった。

 自身が宝塚音楽学校への入学を目指した頃はバレエやジャズダンス、舞踊などを同時に学べるスクールはなく、退団から10年以上が過ぎても、関西ではまだ珍しかった。「私なら力になれるのでは」と1993年にスクールを開校した。

 日比野さんは校長として毎年25人ほど指導してきた。面接での質疑応答、立ち居振る舞いなどのレッスンも取り入れた。音楽学校の合格者が7人に上った年もあり、現在の宙組トップ娘役、春乃さくらさんら5人のトップスターを送り出した。

 舞台人としての経験を基に指導してきたが、数年前から感じることがあった。「レッスンに励む生徒はもちろん頑張っているが、もっと努力をしてほしい。いろんなことを吸収し、新しい自分になりたいという思いはあるのか」と歯がゆさを覚えることが増えたという。盆や正月もゆっくり過ごせないほど忙しい日々、新型コロナウイルス禍…。さまざまな思いから「75歳で区切りをつける」と決めた。

 「やり切った思いしかない」と晴れ晴れとした口調で語る日比野さん。これから宝塚歌劇の舞台を夢見る人たちに向けては、「110年の歴史を誇る音楽学校への入学には、ダンスなどの技術も大切だが、素直な心であいさつをするということなど人としての内面を育てることがより重要です」とエールを送る。

■スタジオ、9月から有料貸し出し バレエやダンス、写真撮影などに

 日比野桃子さんは9月から、閉校した「スタジオ トップハット」1、2階の貸し出しを始めた。1階はバレエやダンスだけでなく、写真スタジオやインスタグラムのライブ配信に活用でき、2階はボーカルレッスンなどに利用できるという。

 1階(広さ99平方メートル)は入り口付近の窓が二重防音で、壁面2面に鏡を設置している。床は弾力性があり、足腰に負担なく踊れるリノリウム材を使用。バレエバー、バレエスタンドも備え付けている。電子ピアノやオーディオデッキなどの備品が自由に使え、Wi-Fiも整備する。2階(10平方メートル)は1面鏡張りの防音で、アップライトピアノを備える。

 利用時間は午前9時から翌日午前1時まで。レンタル料は1、2階ともそれぞれ1時間2300円(電気代、消費税込み)。公式ホームページからLINE(ライン)で予約するか、電話で受け付ける。トップハットTEL0797.74.7447

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