被災現場を長年記録し創作 東京で「雲仙普賢岳/記憶の地層」展 武蔵野美大・大浦教授

被災地で掘り起こした「軽トラック」と大浦教授=東京都小平市、武蔵野美術大

 雲仙・普賢岳噴火災害の被災現場を写真や映像などで長年記録してきた武蔵野美術大の大浦一志教授(70)=東京都在住=の創作品を集めた展覧会「大浦一志-雲仙普賢岳/記憶の地層」が都内の同大美術館で開かれている。「自然の脅威と人間の営み」に向き合ったフィールドワークの集大成として100点を展示。10月1日まで。

出品作の一つ「被災民家跡、発掘プロジェクト 2016」

 大浦教授は、噴火災害の犠牲となった日本経済新聞の記者が残した1枚の写真「襲いかかる火砕流」に衝撃を受け、1992年から現地を度々訪ね「自然と人間」をテーマに作品づくりを続けてきた。94年以降は南島原市深江町大野木場地区で、大火砕流で被災した民家の「玄関扉」や「軽トラック」など遺構の発掘にも取り組み、現地訪問は30年間で計50回以上に及ぶという。
 展覧会は、武蔵野美大教授の退任記念展として開催。掘り起こした軽トラックなどの実物や発掘当時の写真をはじめ、発掘プロジェクトの模様を伝える映像、写真の上に現地の灰土を載せて特殊な樹脂で固めた作品群など「自らの身体を通して」創作を続けた軌跡を紹介している。
 大浦教授は「ライフワークとして30年続けてきたのは、噴火災害の被災地が言葉では簡単に言い表せない、日本人にとっても重要な場所だということ。(噴火災害の)専門家とは違うが、美術の目で見続け、作品を作り続けることで、将来につながっていくものがあると思う」と話した。
 入館無料。時間は午前11時~午後7時(土日祝日は午前10時~午後5時)。水曜休館。

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