西九州新幹線開業1年 長崎、佐賀両県の公共・設備投資効果1736億 長崎では影響実感広がらず

 九州経済調査協会(福岡市、九経調)と十八親和銀行系シンクタンクの長崎経済研究所(長崎市)は21日、共同で実施した西九州新幹線開業1年の影響調査の結果を公表した。長崎、佐賀両県への公共投資・設備投資による経済波及効果が少なくとも1736億円に上った。一方、開業で「プラスの影響がある」と答えた企業は長崎県内でも2割程度にとどまり、効果の実感が広がっていない現状がうかがえる。
 経済波及効果は、新幹線駅のある自治体と、新幹線駅周辺で設備投資をしている企業に投資額を照会し、政府統計なども反映させ推計した。
 内訳は、駅前広場や再開発ビル、宿泊施設などの建設額(直接効果)が1116億円。建設作業員の給与など一次波及効果が381億円、作業員らの消費活動など二次波及効果が239億円。新幹線の建設費や来訪者による観光消費などは含まれず、実際はさらに大きいとみられる。
 九経調の南源来研究員は「沿線から離れた地域でも新幹線活用の機会は十分ある。こうした地域への広がりを含め、5年後、10年後と効果を見極める必要がある」とした。
 一方、影響調査は7~8月、福岡を含めた3県に本社を置く企業を対象にアンケートし、445社が回答した。
 新幹線開業の自社への影響について「大いにプラス」または「多少プラス」と答えたのは3県全体で計15.3%。このうち長崎だけでも計23.3%にとどまった。最も多かったのは「影響はない」で全体の81.5%、長崎に限ると75.3%だった。「大いにマイナス」または「多少マイナス」と答えた企業は佐賀計6.0%、長崎計1.3%と差が見られた。
 顧客取引の拡大や営業強化に今後取り組む予定がある企業のうち、37.6%が「開業が影響する」と答えた。南研究員は「新幹線が企業活動の拡大に一定(プラスに)影響している。今後の投資につながるかを注視したい」と述べた。

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