「巨大松明を作るのはカッコいい」技術伝承へ、観光客の人気スポットでも活動

「松明は1年の節目になる大切な歳時記のようなもの」と語る大西さん(近江八幡市島町)

 国選択無形民俗文化財「八幡まつり」をはじめ、滋賀県近江八幡市内には松明(たいまつ)が奉納される祭礼が数多くある。大西實(みのる)さん(68)は、形も大きさも地域ごとに多彩な松明の伝統を後世に伝えようと活動する「文化遺産としての松明を次世代へ贈る会」の2代目会長を務める。

 地元の同市白王町白部地区では若宮神社の祭礼で松明を奉納している。松明を作る「松明結い」は幼少の頃からの憧れ。「小さい頃は、松明はなおさら大きく見え、それを作り上げる大人たちがかっこよく見えた」。

 口伝で先輩から教えてもらう松明結いは、目と体で覚える。住民が寄り集まり、数メートルに及ぶ松明もあうんの呼吸で完成させる。「普段話せないようなことも松明を結いながらだと話せるような一体感が醸成される。それが大きな魅力」と語る。

 一方、作り手の後継者不足や技術の伝承、菜種殻といった材料の確保など、どの地域も課題を抱えている。「先人が受け継いできた重みを感じている。技術の伝承を途絶えさせてはならない」。2014年に地域を超えて連携し、課題解決に向けて取り組もうと発足された「贈る会」には、組織立ち上げから関わってきた。

 観光客に人気の「ラ コリーナ近江八幡」(北之庄町)で松明の展示イベントを催したり、地域で松明を作る教室を開催したりして、松明に関心を寄せる人たちの裾野を広げる活動に力を入れる。「松明結いに携わる人同士が互いに『頑張ろう』という思いをつなぎ、それを広げて伝統の火をともし続けたい」。

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