『万博弁当』の食材に選ばれたのは…電力会社が育てたエビ 進化する“陸上養殖”事情

最近よく目にする海産物の漁獲量減少のニュース。サンマの不漁は15年で8分の1、ほかにも南伊豆のイセエビに、駿河湾のサクラエビ、浜名湖のアサリも減っています。

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そんな中、注目を集めているのが魚介類の養殖。静岡県内でもさまざまな陸上養殖が行われています。そのひとつが、静岡県磐田市で行われているバナメイエビ「幸えび」です。

この養殖エビの何が注目かというと、1つは2025年に開催される大阪・関西万博の弁当の食材として採用されたという点。2つ目は、運営母体が関西電力という点。そして、3つ目は、とにかくうま味成分が非常に多いという点。育て方に秘密はあるのでしょうか。

「幸えび」は、のどかな景色が広がる磐田市で養殖されています。広さ1.6万㎡の敷地にこの大きさの水槽が6個もあります。最大で年間約1000万尾の「幸えび」が養殖されています。

大阪・関西万博の弁当の食材に選ばれた「幸えび」。選ばれた要因を社長に聞きました。

<海幸ゆきのや 日納真吾社長>
Q「幸えび」が評価された特徴は?
「輸入物の(バナメイエビを)知っていると思うが、国産で丁寧に育てているので、そのおいしさを評価してもらえた」

実はこの「海幸ゆきのや」の社長、関西電力の社員でもあります。なぜ、静岡で関西電力がエビの養殖をすることになったのでしょうか。

<海幸ゆきのや 日納真吾社長>
「これまでエネルギー企業として大きな設備を回すという強みがあるので、大規模なプラントの中でエビをつくっていくことができると思ってチャレンジしている」

そして、「幸えび」の最大の魅力はうま味成分の多さ。クルマエビに引けを取らないくらい多いというデータもあります。

<海幸ゆきのや 日納真吾社長>
Qおいしくなるための育て方のポイントは?
「1つはエサにあって、高品質のエサを使っていて、無添加・無薬品で人が口に入れても大丈夫なエサなので味にも影響している。輸入のバナメイエビのエサと比べると数倍」

さらに、人工的に波を発生させてエビが適度に運動することで、身がより引き締まってぷりぷりの食感になるそうです。

料理人は、「幸えび」をどう評価するのか。実際にこのエビを使ったことのあるレストランで話を聞いてみました。

<肉料理uruichi 林竜二シェフ>
Q食材としてどう見ている?
「鮮度がよくて、甘みもあって、殻が柔らかく、頭まで食べられるのでいい食材です」
Q生が使えるのはメリット?
「非常に大きいと思います。浜松の地産地消を広げるためにも、生きたままで流通してもらって浜松の特産品になれば」

料理をするとどんな味なのか。この日は「幸えびの香草パン粉焼き」を作ってもらいました。

<肉料理uruichi 林竜二シェフ>
Q料理をしての感想は?
「うま味が強いでの使いやすい」

幸えびを食べたお客さんの反応は?

<肉料理uruichi 林竜二シェフ>
「いろいろな料理方法で出して、反応はすごくよかった。みなさん頭からしっぽまでおいしく召し上がっていました。クセがなく、甘みもあって、みそもおいしくて、評判がよかった」

<水野涼子キャスター>
こうした陸上養殖の技術が進んでいけば、海産物を安定して食べることができるようになるので期待したいですね。

<影島亜美キャスター>
以前取材した「三保の松さば」も寄生虫がいない海水の地下水を使ってサバを養殖していて、普通なら生で食べるのに適していないサバを刺身で食べられたり、肝や白子が出てきたり、ここでしか味わえないブランドさばとしてPRしています。

<水野涼子キャスター>
サバの刺身や生の肝って食べられるんですね。

<影島亜美キャスター>
すごくおいしかったです。おそらく、ほかではなかなか食べられないので希少性といった価値も高くなると思います。この陸上養殖、まだまだ可能性が広がりそうです。

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