豊かな有明海へ 南島原市と海洋研究開発機構が初の合同海底調査 水産資源回復に期待の声

深海探査機「江戸っ子1号」の設置作業をする関係者=南島原市西有家町

 漁獲量の減少が続く長崎県南島原市沖の有明海の海洋生物の生態系や海底の状況を調べるため、同市と国立研究開発法人「海洋研究開発機構」(神奈川県横須賀市)は22~25日の日程で初の合同調査を始めた。水産資源回復の足掛かりへ関係者の期待が寄せられている。
 同機構は、地球環境の把握や海洋資源の利用、地震・火山活動に関する調査研究のほか、探査機や観測機器の運用、技術開発にも取り組んでいる。
 調査は南島原市が要請。深海探査機「江戸っ子1号」の小型機を投入し、5地点の水深約20~40メートルの海底で実施する。同1号は東京下町の中小企業や同機構などが共同開発。2013年に世界で初めて深海7800メートルに生息するエビ類や魚類の姿を捉えるなど全国各地の海や湖での調査実績がある。
 22日は有家、西有家、加津佐各町沖の3地点で実施した。西有家漁協前の港には漁協関係者や市職員、同機構職員ら計8人が集合。同1号の漁船への搭載や海洋生物を誘因する餌袋作りなどに追われた。
 市や漁協関係者によると、同市の沖合は干満差が約4メートルと大きく、キビナやイワシなど小魚が豊富で刺し網漁や一本釣りが盛ん。マダイやヒラメ、タチウオ、アラカブ、コノシロ、クルマエビ、トラフグなど多様な海洋生物が取れる。
 漁獲量は2006年は1603トン(ワカメ養殖含む)だったが、後継者不足に加えて燃油の高騰も重なり、21年は847トンとほぼ半減している。
 市水産課の福田好則さんは「漁業者から『以前は年間を通して海藻があったが、最近は春しか藻場がない』と聞く。調査映像から新たな発見や確認できる事も多いはず。豊かな有明海になるよう調査が参考になれば」と意気込んでいる。

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