「90分しっかりと隙なく戦えた」アルゼンチンに8発圧勝、なでしこ・池田太監督はパリ五輪予選へ「変化させたことがしっかりできた」

[写真:©︎CWS Brains, LTD.]

なでしこジャパンの池田太監督が、アルゼンチン女子代表戦を振り返った。

23日、なでしこジャパンは国際親善試合でアルゼンチン女子代表と北九州スタジアムで対戦。これまでの[3-4-2-1]とは異なる新たな布陣、[4-3-3]を採用し、8-0と大勝を収めた。

田中美南(INAC神戸レオネッサ)が開始2分で口火を切ると、10分には長谷川唯(マンチェスター・シティ/イングランド)がPKを沈めて2点目。25分にはCKの二次攻撃から高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)、39分には再び長谷川がネットを揺らし、前半だけで4ゴールを奪う。

後半には途中出場となった清家貴子(三菱重工浦和レッズレディース)、杉田妃和(ポートランド・ソーンズFC/アメリカ)、植木理子(ウェストハム/イングランド)が得点を重ねると、アディショナルタイム2分には清家が芸術的なループを沈め、ゲームを締めくくった。

アルゼンチンは移動のトラブルで到着が2日も遅れる事態に。そのこともあり、万全の相手との対戦とはならなかったが、池田監督は試合後の記者会見で、10月に控えるパリ・オリンピック アジア2次予選に向けて、弾みのつく試合となったと語った。

「来月に控えているオリンピック2次予選に向けて、W杯後このタイミングでこの1試合の準備をして向かう。そういった意味で、このアルゼンチン女子代表とやる位置付けとして、 まず相手がどうこうということより自分たちのやれることを隙なくやっていく。その中で、新しいと言っても、今までと大きく変化したというか、並びは[1-4-3-3]みたいな形になってますけど、今までやってきたところと少しポジションが変化する。そういった選手と共有トレーニングのもと向かいました」

「試合の流れ、相手のコンディションと色々ありますけど、押し込んだ状態から複数点を取れたようなコンビネーション。また、選手1人1人のポジションの感覚というところを確かめられたことは良かったと思いますし、90分しっかりと隙なく戦えたというメンタル面も評価したいと思います」

大勝という結果も、到着の遅れ、主力の不参加と相手のエクスキューズが大きかった中でのもの。その中でも1番の収穫は、システムを変えても特徴を出せたことだとした。

「1番は中盤の真ん中の人数が増えて3人になり、熊谷がアンカーという形のポジションになりましたが、最終ラインに行く前に中盤で跳ね返せる場面が多かったという部分では、変化させたことがしっかりできたなと。熊谷だけではなく、その3人の関係という意味でよかったですし、今まで強みだったワイドのストロークというのも失わずに戦えたのも良かったと思います」

バイエルン時代はクラブでアンカーも務めていた熊谷。予てからそのポジションでのプレーを望んでいたこともあったが、攻撃面でも良さを見せていた。

「攻撃面で言うと、中盤が3枚になったことによって、残りの2枚が2列目から飛び出すことができた。流動的な動きを思い切りしてても安心感というか、中央の安心感を得られたというところは攻撃面のプラスでありますし、ボールを動かして、展開するにあたっての部分でもバランスを取ってくれたんじゃないかなと思います」

4バックに加えて、アンカーに熊谷が入ったことで安定感がましたなでしこジャパン。それにより前線の選手のアグレッシブさが増したという。

また「中央からの崩しをしたいというよりも、今までのストロングのサイドの幅を使った攻撃と中央のコンビネーションにバリエーションを増やすこと。アジア予選に向けて、相手が対応してきた時に、持てる手を増やしたかったというような全体的な部分の方が大きかったです」と語り、チームとして攻撃の幅を広げられたという手応えもあったようだ。

試合はこの1試合となるが、まだ合宿は続く。池田監督は、「ゲームを終えて、選手たちがまずどういうことを感じたのかっていうのは、コミュニケーションを取っていきたいと思いますし、その振り返りのミーティングの中で、明日のトレーニングはリカバーしていく選手もいるでしょうし、またチームで共有していかないといけない。トレーニングのピッチで落とし込む部分とミーディングで確認する部分はあると思いますけども、それを今から作り上げて見つけていくという作業をしていきます」とコメント。「攻撃のアクション、またコンビネーションのところは、うまく関わりができた部分と、もう1つ動きが繋がらなかった部分と、そういったところは見つけていこうかなと思います」と、この後試合を見返して、分析していきたいとした。

この試合では前半には長谷川が、後半には植木がPKのキッカーを務め、どちらも成功した。2人のキッカーが生まれた中、PKキッカーについて池田監督は「試合の1本目のPKに関しては、ミーティングで共有して、色々な選手に指名することもありますし、今回は長谷川選手に決まっていました」とコメント。「2本目のところは、選手の中でペナルティーの判定を取った植木選手に、選手がボールを渡してたっていうシーンもあったので、ピッチ内で決めていました。またそういったプレッシャーの中で植木がしっかり決めてたっていうところでは、感謝の気持ちとプラスでしたし、そこまで考えてピッチ内でいろんなことを話せているっていう、決断できてるっていうことも、このチームの強みだと思います」と語り、選手たちがピッチ上で判断したことを明かし、それができるチームであることを称えた。

アジアでの戦いを前に新たな戦いを見せたなでしこジャパン。特に熊谷紗希(ローマ/イタリア)はこの先も当然のことながらキーマンとなる。

アンカー起用の狙いについて池田監督は「彼女のストロングである守備力というところは、もちろん今までの経験もあり、ベースとして考えてますし、試合展開によっては、彼女のしっかりとしたパススピードを持ったり、展開力。両方良さを出してほしいなとは思います。あとは、対戦相手の力関係によっては、熊谷のポジションのところで、跳ね返せるというプラスもあると思うので考えています」と、攻守両面で良さを見せてもらいたいとコメントした。

また、熊谷がアンカーにいることで新たに試している[4-3-3]と、これまでの[3-4-2-1]は使い分けが可能に。試合中の可変についても「試合中に変化をつけられるっていうのは、人を変えずに、熊谷のポジションだけでやってきたことができますし、熊谷を動かさずに、後ろの4人の選手のサイドで、攻撃的な選手をサイドバックにするか、 守備的な選手をサイドバックにして3枚を作るとか、色々なことでバリエーションが増えると思っているので、今の形だからこうするというよりは、チームとしての幅を増やしていきたいという狙いの中の1つです」とコメント。その他の選手も含めて、組み合わせと立ち位置で相手に合わせて戦い方を変えていきたいという狙いを明かした。

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