LRT事故3件、現場で見えたことは… ドライバー、運営社ともに「不慣れ」 改善施された箇所も

 次世代型路面電車(LRT)の宇都宮芳賀ライトレール線が8月26日に開業して以降、3週間でLRTと車の接触事故が3件相次いだ。運行会社の宇都宮ライトレールは「ドライバーも運転士もLRTにまだ不慣れなことが原因」と指摘する。けが人はいなかったが、重大事故につながる可能性もあった。記者が23日までに事故現場を車で走り、事故状況や原因を探った。

 最初の事故は開業から1週間後だった。宇都宮市清原工業団地の現場は片側1車線の直線道路。反対車線の向こう側にLRTの上下線の軌道が並ぶ。右折禁止の場所だったが、事故車両はここを右折して横切ろうとし、背後から来たLRTと接触した。

 道路左側の歩道上に直進以外を禁止する青い標識がある。しかし、LRTが通る右側に意識が向くと見落とす可能性もよぎった。

 運転男性は「駐車場の入り口だと思って間違えて右折してしまった」と話した。事故を受け、同市は現場に「車輌進入禁止」の看板を設置した。走行してみると、間違えて右折する可能性は大幅に減ったと感じた。

 2件目の現場はJR宇都宮駅東口のロータリー。信号を見落とした乗用車が軌道内に進入した。運転女性は、東口周辺を初めて車で走ったという。実際に走行すると、信号が見えづらいことはなかった。慣れない環境でも落ち着いて運転することが大切に思えた。

 3件目は宇都宮市陽東5丁目で、軌道と隣接する導流帯(ゼブラゾーン)に停車していた乗用車右側のドアミラーに、後方から来たLRTが接触した。

 導流帯の先にある右折レーンは、右側の白線と軌道との間隔が数十センチある。LRTが通る際、近さは感じても危険は感じない。一方、導流帯は軌道との距離が近く、進入すること自体に怖さがあった。ドライバーは軌道に寄らないよう細心の注意が必要だ。柵などの設置も事故防止に有効だ。

 同社の高坂克也(こうさかかつや)運輸企画部長は「ドライバー側に不慣れさがある」とみる。3件目は「運転士が警笛を鳴らすべきだった」と指摘。目測の誤りが主な原因で、全運転士に注意喚起した。「行政と連携し安全な乗り物として運行していく。ドライバーも十分気をつけてほしい」と話す。県警は新たな交通環境でのルール順守を呼びかけている。

事故を受けて進入禁止の看板が設置された1件目の事故現場=22日午前9時50分、宇都宮市清原工業団地
3件目の事故現場近くで記者運転の乗用車の隣を走行するLRT=22日午前11時45分、宇都宮市陽東5丁目

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