スカーフに伝統の技 小松特有、絹の「ジャカード織り」 小倉織物が自社ブランド設立、商品化

シルクジャカード織りの魅力を語る小倉社長=小松市新町の小倉織物

 創業128年を数える絹織物業の老舗「小倉織物」(小松市)が、市内で唯一受け継ぐ織物技法を生かしたスカーフを商品化した。これまでは生地製造のみだったが、市内で織物工場が激減し、コロナ禍で売り上げが落ち込む中、伝統の技を残そうと自社ブランドを設立した。刺しゅうのような立体感や高級感が特長の後染め「シルクジャカード織り」のスカーフで、第1弾として銀座や金沢で売り込んでいく。

 小倉織物は1895(明治28)年に創業した。絹を織った後に染色する「後染め」で洋装に使う特有のシルクジャカード織りの生地を生産し、ファッションブランドなどに供給してきた。英王室に納入したほか、「パリコレ」に出展した実績があり、2020年東京五輪の公式スカーフも製作した。

 自社ブランド「OGURA」は7月に設立した。コロナ禍で高級衣類の需要が減り、売り上げが4年前に比べて半分以下に落ち込んだことを受け、新たな挑戦としてクラウドファンディングで資金を集めた。スカーフに加え、扇子や御朱印帳など手に取りやすい商品の販売も予定している。

 小松織物工業協同組合によると、1955(昭和30)年ごろには約600軒あった市内の織物工場は、経営難や後継者不足で33軒にまで激減し、主流は絹から合成繊維に変わった。コロナ禍では13軒が廃業した。小倉久英社長(64)は、自社と同じ技法を使う工場について「全国でも他に見当たらない」と話す。

 職人の高齢化や後継者不足が進む中、小倉社長は「熟練の技をつないでいくことがとにかく大事だ。繊維のまち小松の歴史を後世に伝えたい」と話す。さらに「半年後に北陸新幹線がやってくる。多くの人に手に取ってもらい、地方でもこんなことができるんだと知ってほしい」と語った。

  ●金沢で25日から期間限定販売

 25日~10月1日に金沢市の香林坊大和1階に期間限定ショップを置き、スカーフを販売する。11月には東京の銀座三越でも期間限定で出店する。

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