まるで野菜のテーマパーク!? 東京ドーム3個分の広さ おいしいジュースの秘密 【実はとちぎで作っています】⑩カゴメ那須工場

カゴメ那須工場

 野菜不足の現代人にとって強い味方と言えば「野菜ジュース」。手軽に、おいしく、必要な栄養素が取れるありがたい存在だ。消費者にとって知名度の高いメーカーの1社、カゴメが那須塩原市に工場を持っているという。お世話になっている野菜ジュースに感謝の気持ちを抱きつつ、工場に向かった。

 カゴメ那須工場は1961年、那須塩原市西富山に設立された。立地する栃木県、隣接する茨城県ともにトマトの産地。大消費地の首都圏にもアクセスがよい。那須地域は水源地で、良質で水が豊富に手に入る。さまざまな好条件が重なる適地だった。大きさはなんと東京ドーム3個分。国内6カ所の工場では最も広いという。

 新型コロナウイルス感染症の影響で現在、工場見学は中断している。休止前は県内外から多くの来場者を呼ぶ人気ぶりで、年間7千人が訪れていたという。工場見学の案内を担当している鹿野司(かのつかさ)さんは「直接お客さまと触れ合うことができなくてすごく残念。再開したらたくさんの人に来てもらいたい」と“カゴメファン”との再訪を熱望している。

 工場案内の前、「ぜひ」と差し出されたのは、食塩無添加の「カゴメトマトジュースプレミアム」。国産完熟トマトが原料だ。1口飲むと、濃厚な味わいが口に広がる。「これはジュースじゃない、新鮮なトマトそのものだ」と思えるほど。トマト好きにはたまらないだろう。

 工場内部に向かう途中で案内されたのは、野菜畑。工場見学をする人に野菜の成長過程を見てもらうため、約10種類を常時栽培しているという。

 工場横には、大量の黄色い箱が積まれていた。中は契約農家が手摘みしたトマトで、一箱に入る量は約20キロ。機械で収穫したトマトは約400キロ入る鉄製の籠に入っていた。工場では7~9月の間に約1.6万トンのトマトを加工するというからこの量も納得だ。普通に暮らせば、人生で目にするトマトの量ははるかに超えてしまったような気さえするボリュームだ。

 いよいよ工場内部へ。最初に案内されたのはトマトの洗浄工程が見えるブースだ。流れるプールでぷかぷかと泳ぐように洗われていく大量のトマトは、見ているだけで楽しい。

 トマトは、ゴムのディスクや固いブラシで3段階に分け、しっかりと汚れを落とされていく。ここまで洗われてもつぶれないくらい張りのある皮を持つトマトは、通常の生食用トマトより、抗酸化作用を持つ栄養素「リコピン」が2~3倍もあるらしい。恐れ入りました。

 洗浄後は選別作業に移る。割れや、傷み、へたの残りなどを、人の目でしっかりと確認していく。へたを一つ一つ取るのは大変そうだが、実は作業を効率化する秘密が隠されている。カゴメが開発したトマトジュース用トマト「凛々子(りりこ)」は、果実をもいだ時にへたが残りにくいようになっているので、作業時にはほとんどへたがないのだという。

 選び抜かれたトマトは細かくつぶし、搾り、味などを調合し、殺菌などを経てから缶に充填(じゅうてん)されていく。その様子はまるでメリーゴーラウンド。くるくると回りながら1分間で約1500缶のトマトジュースが詰められていく。

 よくコンビニなどで見かける野菜ジュースのパックの充填工程も見せてもらった。筒状になった紙にジュースを入れて機械でそのまま密封するので、余分な空気が入らないのだという。試しに振ってみると、確かに、音がしなかった。

 最後に、出来上がった商品が倉庫へと運ばれるブースへ案内してもらった。大きなクレーンでまとめられたジュースが向かう先は、ジェットコースターのような「ロボトレイン」。表示された容量に過不足はないか、賞味期限が読み取れるかなど、いくつもの検査・最終点検を終えたジュースたちはトレインで倉庫へと運ばれていった。

 流れるプールにメリーゴーラウンド、ジェットコースター-。おいしいジュースが私たちの元に届くまでに、こんなに楽しそうな道のりをたどっていたとは思わなかった。

 高田貴志(たかだたかし)工場長(54)は「野菜飲料をたくさん作っているので、お客さまの健康に寄与できる喜びや誇りを持って働いている。手軽に厳選した野菜のおいしさを味わってもらえたらうれしい」とほほ笑んだ。

 おいしく栄養管理するために、これからもお世話になります-。テーマパークの帰り道のような名残惜しさを感じながら、工場を後にした。

野菜一日これ一本
カゴメトマトジュースプレミアム食塩無添加
工場敷地内にある野菜畑
トマトが入った箱が並ぶ
箱に入った大量のトマト
水に流されながら洗われていくトマト
トマトの割れや傷み、へたの残りなどを人の目でしっかり確認していく
くるくると回りながら充填していく
紙パックの充填について説明する鹿野さん
ロボトレイン
運ばれていくジュース
トマトや商品と並ぶ高田工場長
記者も愛飲する野菜生活100オリジナル

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