「保有」から「利用」への転換期・レンタカーの未来は、知恵を絞って!~JR東日本レンタリース常務取締役・深沢隆幸氏に聞く~

個人旅行化する観光の重要なコンテンツ「レンタカー」。JR東日本グループの基幹となるJR東日本レンタリースを訪問し、その事業の詳細と未来について、常務取締役・深沢隆幸さんにお聞きしてきました。

JR東日本レンタリースとは・・・

駅レンタカー「トレン太くん」の名称で営業する弊社は1992年の設立。駅レンタカーは2020年に発足50周年を迎えました。

JR東日本レンタリースは、JR東日本グループで「カーリース」と「レンタカー」を専門にしている会社です。グループ全体の「安全の追求」という行動指針によって、信頼のおけるメンテナンス体制を組み、「安心安全な車両」の提供に努めています。

そのために、電気自動車やハイブリッド車、乗用車、商用車、トラック、バスをはじめとして、お客さまのあらゆるニーズにお応えしています。また、福祉車両や特殊車両(軌陸車、塵芥車、高所作業車、フォークリフト)等のリースも行っています。

現在、社員数は350名近くおり、JR東日本の営業区域が会社の範囲です。

カーリースとは、どのようなものですか?

カーリースのメリットは、リース料金が毎月定額。そのため、コスト管理把握が容易で、無理ない資金計画が立てられます。また、車両購入手続きから税金の納付、保険加入や整備手配などの面倒な事務処理をリース会社が代行し、業務の削減につながることです。

JR東日本のロゴ入り営業車

JR東日本グループなどを対象に「業務用自動車」を提供するとともに、業務効率の改善や安全性向上など自動車に関わるトータルな提案やサポートを行っています。HV、PHEV、EVなど環境にやさしい車の導入にも積極的に取り組んでいます。

また、線路上で工事や点検を行う特殊車両の提供など、鉄道の安全安定輸送にも貢献しています。

カーリース事業は、弊社にとって、大きな柱の一つです。

駅レンタカーの現状を教えてください

駅レンタカー営業所に止まるレンタカー

「トレン太くん」は、日本全国約250の駅から出発することができる「駅レンタカー」の名称です。列車とセットでお得なJR共通商品の「レール&レンタカーきっぷ」だけではなく、昨今ではJR各社がオリジナルの商品の開発を進めており、JR東日本ではインターネット指定席予約サービスである「えきねっと」と連携した商品を展開。

2022年に発売した「えきねっと+駅レンタカープランneo」は、JRのきっぷがJREPOINTで最大10%還元され、また、駅レンタカーは15%割引となることで、大変ご好評をいただいております。

(えきねっと+駅レンタカープランneo)

これからの課題は、どのようなことですか?

この数年間、コロナ禍で旅行需要は激減し、レンタカー業界も大変厳しい状況となりました。また、観光業界全体が人手不足に陥っており、従前の営業形態を維持するのも難しい状況となっております。

カーシェアリングの駐車場に止まるシェアリングカー

併せて、ご利用する方のニーズも多様化しており、人を介さず、シームレスにレンタカーをご利用したい需要もあります。そのために、弊社でも昨年9月より、「駅レンタカー・セルフ」という無人貸出プランの導入を始めました。

このプランは、レンタカーの貸出に関して、営業所での手続きを不要として、Suica等の交通系ICカードを活用して、利用するものです。

24時間貸出・返却が可能で、レンタカーの有人営業所の補完の意味からも、現在オリックス自動車と連携して、展開箇所を拡大中です。

まさしく、列車を降りてすぐ乗れる、駅レンタカーのカーシェアリングサービスです。

レンタカーとの違いは、何ですか?

カーシェアリングは、まず会員登録等を行ない、月額料金が発生します。しかしながら、15分単位での貸出や自動車の返却時にガソリンを満タンにする必要はありません。営業所に出向いて手続きをする必要がないため、時間管理も容易にできます。

併せて、JR東日本グループの強みを生かし、駅チカを中心にサービスを展開しており、これまでに32ステーション、50台を配置しております。(2023年9月1日現在)

今後は、鉄道商品と「駅レンタカー・セルフ」を組み合わせた商品展開なども検討していきたいと思っております。

二次交通事業者、御社の戦略はどこにあるのでしょうか?

前段でお話をしたとおり、弊社の営業エリアはJR東日本の営業区域内です。JR東日本の新幹線は、沿線人口が減少傾向です。また、ご利用形態もビジネスと観光がおおむね半分となっています。そのため、沿線の観光流動活性化がJR東日本グループの大きな課題とっています。

そのような課題を解決すべく、弊社もJR東日本と連携し、二次交通事業者としてさまざまななリソースを提供していきたいと思っています。レンタカー事業では「総合モビリティサービス」を充実すべく、EV車、水素自動車、電動バイクの新たなサービスを展開しています。

併せて、シームレスにレンタカーをご利用いただける「駅レンタカー・セルフ」の更なる拡充を図るとともに鉄道との連携を進めていきます。

駅を降りてのラストワンマイル。ここを担うべくさまざまなアイデアを考えていきたいと思います。

(JR東日本レンタリースHP)

えきねっと+駅レンタカープランneo 紹介動画

駅レンタカーのチラシ

駅レンタカー・セルフのチラシ

えきねっと+駅レンタカープランneoのチラシ#### 深沢隆幸(ふかさわ・たかゆき)

JR東日本レンタリース常務取締役。1991年に東日本旅客鉄道㈱に入社。2021年鉄道事業本部営業部課長、2016年東京支社営業部首都圏AGTセンター所長、2018年東京支社柏駅長、2020年東京支社東京駅副駅長を歴任。2022年7月から現職。

聞き手 TMS編集部 中村 修

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