「微住」が縁、台湾のカップルが福井で仏前結婚式 滞在拠点の寺で念願の和装、「まんじゅうまき」も

仏前結婚式を挙げた新郎の鍾さんと新婦の陳さん。左は微住を受け入れた住職の佐々木さん=9月24日、福井県福井市脇三ケ町の最勝寺

 一定期間定住する旅のスタイル「微住」を自ら体験し雑誌で紹介した台湾人カップルが9月24日、6年前に取材拠点として滞在した福井県福井市東郷地区の最勝寺(同市脇三ケ町)で仏前結婚式を挙げた。念願の和装で臨んだ新郎新婦は「“日本の故郷”と言える東郷で、ご縁のあった皆さんに祝ってもらえてうれしい」と笑顔を見せた。

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 2人は台湾の人気カルチャー誌「秋刀魚(さんま)」を発行している出版社、黒潮文化(台北市)の代表、鍾昕翰(ゾンシンハン)さん(35)と編集長の陳頤華(チェンイーファー)さん(34)。2017年3月、福井観光コンベンションビューロー(現・福井市観光協会)の事業で、微住を提案するガイドブック「青花魚(さば)」を制作するため、編集部員らと来日。最勝寺に約2週間民泊して嶺北の食や文化、歴史を取材し、地元住民とも親交を深めた。

 新婦の陳さんは同寺住職の佐々木教幸さん(71)を「私の日本の家族」と呼び、「どうしてもここで和装で挙式したかった」。紋付き袴(はかま)に身を包んだ新郎とともに、白無垢(むく)姿で結婚式に臨んだ。

 式には黒潮文化の編集部員や両家の親族、東郷地区住民ら約20人が参列。2人は誓いの言葉で「ここで式を挙げることは誠にありがたいことです」と謝意を表した。佐々木さんは感極まりながら「これからもこの良いご縁を育てていきたい」と2人に語り掛けた。

 式の後、ガイドブックでも取り上げた「まんじゅうまき」を行い、新郎新婦らが紅白まんじゅうや台湾の菓子などをまいた。2人は「佐々木さんの寺で、本当の意味で日本文化を体験できて感動した。この感動を何らかの形で発信したい」と声を弾ませた。

 微住は県内外で取り組みが広がり、最勝寺には「微住発祥の地」の石碑が建てられている。微住提唱者で、台湾との橋渡し役を担ってきた文化交流プロデューサー田中佑典さん(37)=福井市出身=は「人生の晴れ舞台に東郷を選んでもらって喜ばしい。微住のモデルケースになる」と話していた。

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