事件・トラブルが相次ぐ“トー横キッズ”…居場所を求めて集まる若者に、いま必要な支援とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「激論サミット」のコーナーでは、居場所のない若者たちに必要な支援について議論しました。

◆大きな社会問題となっている"トー横キッズ”

東京・歌舞伎町の一角、新宿東宝ビルの横・通称"トー横”には午後9時を回っても10~20代の多くの若者たちの姿が。"トー横キッズ”と呼ばれる彼らを巡っては飲酒や違法薬物、性犯罪や暴力など事件やトラブルが横行。市販薬の過剰摂取"オーバードーズ”で搬送される若者が出るなど、大きな社会問題となっています。

なぜトー横に集まるのか。16歳の少女に聞いてみると「(家には)帰らない。適当に歩いていたら急にお金をくれる人とか、急にご飯を買ってくれる人とかがいる」との答えが。さらに「家族と仲が良くないから、あんまり(家に)いたくない。うちはパパとママのこと大好きだけど、パパとママはうちのことあまり好きじゃなさそうだから、親からの愛がもっと欲しい」とも。

また、20代の女性は「"シャフ(社会不適合者)”で昼職もできなくて、最終的に売春しかできなくなった」、そして「人生やってられないから、自分の居場所を見つけに(トー横に)来ている」と話します。

生きづらさを抱えている少女たちの支援をするべく2009年から活動しているNPO法人BONDプロジェクト代表の橘ジュンさんは、こうした現状に対し「いろいろ生きづらさを抱えている子、居場所を求めて彷徨っている子たちとの出会いが多く、日々相談を受けながら一緒に考えさせてもらっている」と実感を語ります。

現役保育士のてぃ先生は今考えないといけないことが「2つある」と指摘。ひとつは、そもそもの原因を解決すること。その傍ら、すぐにでも支援が必要な子もいるため「原因についてばかり話し合っていても今が解決できなければ問題の解消にはならない」と緊急的な処置と強靭性のある対策を求めます。

Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは「社会不適合者だから」という女性の声にショックを受けつつ、「私も何か問題があったときに自分が頑張らないといけないと思うが、そうではなくて、社会が変われば不適合な人は生まれない。それを自分のせいだとなる現状は絶対に変えたい」と声を大にします。

ジャーナリストで海洋冒険家の辛坊治郎さんは「世の中には放っておいてほしい人もたくさんいるはず。そう思っていない人はなんとかしないといけないが、そう思っているならば放っておいてあげるほうが幸せでもあるので非常に難しい」と別の視点からこの問題を直視。

その上で、辛坊さんは「今すぐ餓死しそうな人たちは助けてあげないといけないが、トー横にいる人たちが今、何を求めているかは正直僕にはわからない」と頭を悩ませると、てぃ先生からは「放っておくにしても正しい形で放っておいてあげないといけない」との声もありました。

◆事件が相次ぐトー横に若者が集まる理由とは?

トー横では今年7月、14歳の少女がわいせつな行為を受け、5月には男子高校生が車に監禁・暴行され、身代金20万円を奪われる事件もありました。また、2022年には16歳の少女がわいせつな行為を受け、ボランティア団体の代表をつとめていた"トー横のハウル”と呼ばれる30代男性が逮捕。2021年には歌舞伎町のビルの屋上で男性がトー横に出入りする少年らから集団リンチの末に亡くなるという事件があり、少年2人を含む4人が逮捕されています。

こうして事件が多発しているにも関わらず少年・少女がトー横を目指す理由について、橘さんはさまざまな女の子から話を聞いた結果から「家や学校に居場所があると感じられない、学校に行けずに同世代の友達ができず、友達を作りたいと思ってSNSなどで(トー横を)知り、憧れて行った子たちがハマってしまったケースが多い」と分析。

さらには、「トー横に居場所を感じて、そこにいるためにパパ活をしたりしてお金を得て過ごしている子もいる。そうしないとそこにいられない。つらいけど家に帰りたくないし居場所がない。自分と同じ境遇の子たちがいるから楽しいとか、いろいろなことを経験して自暴自棄になったり、いろいろな気持ちが入り混じってトー横から離れられないと感じる」とトー横で感じる思いを吐露。

トー横を巡っては、東京都も有識者会議を開き、対策を講じています。主な提案内容は「SNS投稿の分析などによる"悪意ある大人”の実態把握」に「相談窓口の設置や滞在拠点とされるホテルやネットカフェへの啓発」。そのほか、売春しようとする大人へのターゲティング広告の手法を使った警告などで、小池知事は「警察、地元自治体をはじめ、関係機関と一層緊密に連携する」と具体化を進める方針を示しています。

この一連の対策に、黒部さんは「今現在起こっている問題を解決するという部分では一定の効果がありそう」と評価する傍ら、「根本にはもっと根深い問題があり、それを解決したほうがむしろ早いこともあると思う。そうでないと悪いことをしようとする、弱い立場の人間を利用しようとする大人がどんどん出てくるから、やはり社会が変わらないといけない」と改めて社会の変化を切望します。

◆居場所のない少女たちを救う活動…関係性を作ることが大事

橘さんは居場所のない少女たちを救うため定期的に夜の街をパトロールし、スタッフとともにこれまで3,000人以上の少女に声をかけ、保護活動にあたってきました。

また、昼間はカフェ型相談室を設けて、生活や就労の支援、専門家によるカウンセリングなどあらゆる面から少女たちをサポート。開設した理由について、橘さんは「昼間、家にいられないとか学校に行けないとか、1人でいたら変な出会いを求めてしまいそうな子が昼間も安全に過ごせるような居場所が必要」と語ります。

昼間の居場所を求めてやってきた中学生の少女に話を聞いてみると「両親とうまくいかないことがよくあって、違う場所に行きたいなとよく思うんですけど、ここを紹介してもらって来ました」との声が。現在、彼女は学校に行けていないそうですが「ここに来るとスタッフのお姉さんたちもすごく優しくて、すごくいやすい。しっかり自分を見つめ直して、学校に行けるようになりたいです」と話していました。

てぃ先生は「こうしたテーマになると"居場所”という言葉がよく出てくるが、居場所っていろいろな意味があると思う」と話します。そして、こうした問題を解決するには「ただいることのできる場所」を提供するのではなく、「自分をちゃんと承認してくれる誰かがいないと、居場所にはなり得ない」と指摘します。

辛坊さんは橘さんの取り組みを「素晴らしい」と絶賛しつつ、「少年はどうするのか?」と質問。これに橘さんは少年を支援する場所も必要だと考えてはいるものの、実際問題、支援の現場で少年・少女を一緒にすると恋愛面などさらなる問題を抱える可能性もあるとし、「安全面を考えていくと、私たちは女性による女性の支援を今はやっている」と返答します。

続けて、橘さんは「(少女たちは)認めてくれる、共感してくれることを求めていると思うが、私たちも彼女たちに話を聞かせてもらって理解し、受け入れる・受け止めるようにしたいと思っている」と述べます。なかには関わりを持つことを望まない子もいるそうですが、そうしたなかでも「関係性を作っていくことが大事」とも。

なお、居場所のない若者がたむろする場所はトー横に限らず各地にあります。例えば、横浜の商業施設「横浜ビブレ」の横の通路"ビブ横”。名古屋では「ドン・キホーテ」の横の"ドン横”。大阪では道頓堀の「グリコの看板」の下"グリ下”などが有名ですが、地域によっては犯罪を未然に防ぐため防犯カメラを強化し対応している所や、夏休みの前に一斉補導を行った場所もあるそうです。

◆居場所のない若者たちにはどんな支援が必要か?

居場所を求める若者たちに今、どんな支援が必要なのか。黒部さんは「いろいろな地域に規則や評価がなるべく少ない居場所、学校などをたくさん作ってほしい」と望みます。「今は居場所がトー横になっているが、そうではない居場所。なるべく自分が不適合者だとか、自分が悪いと思わなくていいような、みんなが認め合える場所を複数用意していくことが必要」と主張。

てぃ先生の意見は「家族の在り方を社会全体で考えてみる」。冒頭、「自分はパパ・ママのことが好きだけど、パパ・ママは自分のことが好きじゃない」と話していた少女がいましたが、「社会の多くの人たちは子どもにそう思わせる親が良くないと考えると思うが、自分の子どもだとしても愛せない場合があると思う」とてぃ先生。

続けて、「自分の子どもだから絶対に愛さないといけない、自分の親だから絶対に敬わなければいけないとか、そういうことを考えると居場所がどんどんつらくなっていく、家族という場所がどんどんつらくなっていく気がする」と話し、「もう少し柔らかく、寛容に、(そうしたことを)社会で認めてあげることができれば、居場所ももう少し増えるんじゃないか」と投げかけます。

辛坊さんは「本心は何かを見定める」。本心から放っておいてほしい子は放っておくべきだが、なかには口先ではそう言うものの、本心では誰かに助けてもらいたい子もいるとした上で「一人ひとりに細かく聞いてあたるしかない。橘さんのような方の活動が大切」と述べます。

橘さんは「大人が考えるもの、子どもが求めるものが違っても関係性を持って、そこを埋めていく取り組みが必要」と語り、「ネットもリアルも安全な居場所」の必要性を挙げます。

最後に、堀は橘さんの取り組みを改めて称えつつ、「歌舞伎町のなかで経済圏ができているが、別の稼ぎ方もあるし、仕事のあり方などを伝えることが大切」とキャリア教育の重要性を訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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