黄色い小旗は元気の目印 玄関先に毎朝掲示、高齢者らの安否を確認 青森・十和田市一本松地区

「旗出ていないよ」。知人の野崎さち子さん(左)宅で掲示状況を見守る野崎百合子さん=9月20日、一本松地区
見守り活動で「元気」の目印にしている旗

 青森県十和田市の一本松地区の住民有志が7月から、「元気です」と記された黄色い小旗を目印に、地区の高齢者らの見守り活動を続けている。玄関先に毎朝、旗を提げてもらい、担当者が掲示状況をチェック。提げられていない世帯には直接声をかけて安否を確かめる。コロナ禍で停滞した住民同士のコミュニケーションを活発にさせるのも狙いで、地区住民からは「安心感につながる。地区の連帯感も深まっていると感じる」などの声が上がっている。

 一本松地区は五戸町にほど近い国道4号沿いの農業地帯。人口は約40世帯・100人ほどで、65歳以上の高齢者の割合は約60%に上る。小学校が閉校となるなど衰退する地区を元気にしようと、住民有志が2021年度から「むらづくり会議」を開催。話し合いを基に公民館で郷土料理を中心とした食堂を開いたり、トランプ大会を行うなどして住民が集う場を設けている。

 こうした中、地区の1人暮らしの高齢者が自宅で体調を崩し、誰にも気づかれずにさらに悪化するという出来事があった。会議に集う有志ら約10人は今年4月、地区の困り事解決へ自分たちで考え行動する「いきいき一本松実行隊」を結成、高齢者らの見守り活動を行うことにした。

 「日本一安心なむらづくり一本松事業」と名付け、縦約30センチ、横約20センチの旗を各世帯に配布。朝8時ごろまでに提げ、昼ごろに収めてもらっている。地区を4班に分けて各班長が見回り、安否確認できない場合は民生委員や保健協力員に協力を求める。旗は雨にぬれても大丈夫なようにナイロン製で、市の支援事業を活用して作った。

 事業の実施は一本松町内会の会合や地区の広報紙などで周知。参加は強制ではなく見守りを必要としない世帯もあるが、ほとんどの世帯が協力している。これまでの2カ月半では、安否が分からないなどの緊急事態は起きていないという。

 「やって良かったという人もけっこういる。町内会としても力になりたい」と田中勇治町内会長(62)。毎朝、散歩がてらに旗の状況を見て歩いている同隊の野崎百合子会長(66)は「朝起きたら旗を出すというのが習慣になってきているようだ。これまで話をしたことがない人とも話したりするようになった」と手応えを感じている。

 野崎会長の訪問に笑顔で応じていた野崎昭次さん(79)は「旗の出し入れは面倒ではない。見守ってもらっているという安心感があるし、自分も周りの家のことを気にするようになった。地区のつながりが深まってきたと思う」と話していた。

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