「戸建住宅」メーカー117社  売上高は5.3%増 資材高騰、人件費上昇で約6割の企業が減益

~ 全国「主要戸建メーカー、ハウスビルダー117社」動向調査 ~

2022年度(2022年4月-2023年3月)に全国で売上高100億円を超えた戸建メーカー、ハウスビルダーは117社だった。117社の売上高合計は約7兆8,945億円(前年度比5.3%増、前年度7兆4,923億円)で、前年度から約4,000億円増加した。一方、利益は約4,027億円(同3.9%減、同4,190億円)で、前年度から3.9%落ち込み、減益企業は全体の約6割(58.9%)に達した。
2022年度の戸建住宅の新設住宅着工戸数(持家+分譲戸建、国土交通省調べ)は39万2,453戸で、前年度に比べて7.7%減少したが、コストアップによる売上増の様相が強まり、減益企業が相次いだ。

売上増の背景は、高付加価値化による価格上昇のほか、建築資材や物流費、人件費などの上昇に伴う販売価格の上昇が大きい。一方で、価格転嫁が追いつかず利益後退が鮮明になった。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースから、戸建住宅の建築や分譲が主力事業の企業を対象に、2022年度の売上高が100億円以上、直近3期連続で売上高と利益が比較可能な117社を抽出し、分析した。

2023年6月の実質賃金が16カ月連続で前年割れするなかでも、実需層やファミリー層を中心に住宅需要は根強い。だが、物価高や人手不足でコスト環境が悪化し、戸建メーカーやハウスビルダーはこれまで以上に顧客に選ばれるために高付加価値を見出し、差別化への取り組みが求められている。同時に、スケールメリットやシナジー効果を遡及した提携、M&Aなども活発化することが予想される。

※本調査はTSR企業データベース(約390万社)から、戸建住宅の分譲や建築事業が主力の売上高100億円以上の企業を「主要戸建メーカー、ハウスビルダー」と定義。2022年度決算を最新期とした。調査は今回が初めて。


最新期 売上高は5.3%増 利益は3.9%減

主要戸建メーカー、ハウスビルダー117社の最新期(2022年度)の売上高合計は7兆8,945億1,000万円(前年度比5.3%増)で、2期連続で増加した。
戸建住宅の新設住宅着工戸数(持家+分譲戸建)は2021年度が42万5,403戸、2022年度が39万2,453戸と7.7%減少した。このため、増収は、コストアップ分の価格転嫁や、付加価値による価格引き上げが寄与したとみられる。
ただ、最新期の利益合計は、4,026億9,400万円(同3.9%減)と減少に転じた。増収効果はあったが、コスト吸収が十分とは言えなかったことを示唆している。

売上高1,000億円以上は16社

単体決算の売上高別の分布では、1兆円以上が1社のほか、売上高1,000億円以上が16社(構成比13.6%)だった。全国を営業エリアに展開する大手が中心で、高い知名度を誇る。
一方、売上高100億円台は53社(同45.2%)で、半数近くを占めた。特定エリアに集中したドミナント戦略を展開し、地域内での実績と高い知名度を強みに業績を伸ばしている。

売上高 増収企業は2年連続で6割超え

売上高の増減収別では、最新期の2022年度は増収が78社(構成比66.6%)で、減収は39社(同33.3%)だった。
前年度(増収企業率68.3%、減収企業率31.6%)は、コロナ禍の影響から新設住宅着工戸数が大きく落ち込んだ2020年度の反動もあって、増収企業の構成比は約7割に達した。
これに対し2022年度は、売上高の合計金額ベースでは5.3%の伸びを見せたが、増収企業は2社減少し、鈍化した。

利益金 減益企業が約6割に増加

増減益別では、最新期の2022年度は増益が48社(構成比41.0%)、減益が69社(同58.9%)だった。
前年度は増益企業数が95社と8割を超えたが、最新期は減益企業が大幅に増加し、利益環境の悪化が鮮明になっている。
また、2022年度の赤字企業数は14社(構成比11.9%)で、前年度の4社(同3.4%)から3倍以上に増加した。

業歴50年未満が約7割 新興企業も多い

業歴別では、業歴50年未満が81社(構成比69.2%)で、約7割を占めた。このうち1980年代の創業が29社で最も多く、1990年代創業が18社、2000年代に入って創業した新興企業も20社(同17.0%)と2割にせまる。
比較的、業歴の浅い企業が多いのが特徴で、一次取得者による住宅需要増をターゲットに、高い営業力で業績を急拡大させた企業も多い。
一方、最も長い業歴があるのは古河林業(株)(TSR企業コード:296221481、千代田区、創業1875年)で、唯一の100年超え。古河家の初代、古河市兵衛氏が山林事業を開始したのをルーツとしている。

資本金1億円以上が6割

資本金別では、最多は1億円以上の72社(構成比61.5%)で6割を占めた。次いで資本金5千万~1億円未満が24社(同20.5%)、1~5千万円未満が21社(同17.9%)と続く。
売上高100億円以上の企業群だけに充実した資本力が特徴。資本金の最大は積水ハウス(株)(TSR企業コード:570101379、大阪市北区)の2,025億9,120万9,000円。

売上トップは積水ハウス 上位20社に飯田グループが6社ランクイン

2022年度決算の売上高ランキング20社(単体ベース)では、トップが積水ハウス(株)の1兆2,038億円。ハウスメーカーのトップ企業として全国に展開し、近年は海外事業も注力している。
次いで、住友林業(株)、(株)一条工務店など、知名度の高い業界大手が名を連ね、売上高1,000億円以上は16社にのぼる。
上位20社では、一建設(株)、(株)アーネストワン、(株)飯田産業など、東証プライム上場の飯田グループホールディングス(株)(TSR企業コード:332448568)の連結子会社6社がランクインした。6社合計の売上高は約1兆3,000億円にのぼり、グループメリットを生かした経営を推進している。
また、4位の(株)オープンハウス・ディベロップメント、16位の(株)ホーク・ワンを擁する(株)オープンハウスグループ(東証プライム、TSR企業コード:294451536)は2023年9月、21位の(株)三栄建築設計(東証プライム、TSR企業コード:293216029、売上高713億円)をTOBで完全子会社化する。オープンハウスグループは、これまでM&Aや積極的な広告戦略、高い営業力で成長を続けており、業界勢力図を変えるキープレイヤーとしても注目を集めている。

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