土石流「山津波」の記憶を後世に 宇佐市出光地区、発生80年迎え伝承碑設置【大分県】

八坂神社に設置された山津波の記録を記した災害伝承碑=宇佐市出光
出光地区コミュニティー消防センターに展示されている山津波発生当時の写真
約40人が出席した慰霊式典。災害伝承碑(右)の前で防災意識の向上を誓った=宇佐市出光

 【宇佐】宇佐市出光地区で80年前に「山津波」と呼ばれる大規模な土石流が発生し、多くの人が犠牲になったことを後世に伝えるため、住民が「災害伝承碑」を地区の八坂神社に設置した。節目の20日に慰霊式典を開いて除幕し、出席者は防災意識の向上を誓った。

 地元関係者によると、同地区では1943年9月20日、県内を襲った台風26号による豪雨で、神社脇の山の斜面が幅50メートル、高さ100メートルにわたって崩壊。土石流で多くの家屋が倒壊し、8家族29人が犠牲になった。近年、市内で発生した災害では最大級の被害だったと伝わるが、太平洋戦争中で宇佐市史などには記録されていないという。

 遺族や当時を知る人が少なくなる中、伝承碑は「悲劇を忘れず、後世に伝えねばならない」と、災害から80年の節目に地区が作った。

 式典には地元住民や遺族、市などの関係者約40人が出席。遺族を代表し、神社の隣に家があり親族7人が亡くなった高築良さん(76)が「災害を伝承していくことが大切。二度と起きないことを祈る」とあいさつした。碑を除幕し、全員で黙とうをささげた。

 碑は災害前から神社の鳥居の脇にあったといわれる石に、災害の記録を掘った金属板を埋め込んだ。

 高月久富区長(69)は「異常気象などで大災害のリスクが高まっている今だからこそ、記録を残すことが防災につながる」と話した。

 市は、災害の歴史を伝える全国の石碑などを地図上に記録する国土地理院の取り組み「災害伝承碑」に、同地区の碑を申請することにしている。

© 有限会社大分合同新聞社