「多死社会で今後も増える」 困窮者の葬祭扶助、過去5年で最多 青森県内2022年度、1億200万円

葬祭扶助費で行われた青森市の葬儀。約19万円の範囲内でひつぎ、仏衣、霊きゅう車などの費用は賄えるという(リンクモア平安閣提供)

 生活保護を受けている経済的困窮者に対し、自治体が葬祭費を支給する葬祭扶助費が増えている。2022年度の青森県の総額は約1億200万円と、過去5年で最多に上った。生活困窮の単身高齢者が増えているほか、生活保護を受けていた故人と親族が疎遠になり、遺体の引き取りを拒否されたため、葬儀を執行する民生委員らに適用される事例が増えている。関係者は「多死社会で葬祭扶助費は今後も増える」とみている。

 葬祭扶助は生活保護法に基づく制度で、支給されるケースは▽遺族が生活保護を受け葬儀費用を出せない▽故人に扶養義務者がおらず、家主や民生委員などの第三者が葬儀を手配する場合。生活保護を受けていた故人と親族が疎遠となり、親族が遺体の引き取りを拒否した場合などは、葬儀の執行者となる民生委員らに適用される。

 支給額は最低限の葬儀をできる程度。自治体で異なり、青森市の場合は19万1800円以内。僧侶による読経がなく、祭壇もない簡素な儀式で行うケースが多い。

 県によると、22年度の県内葬祭扶助費の合計は約1億200万円と前年度から約730万円(8%)増えた。支給件数は540件で前年度より64件増えた。

 生活保護率が県内でも高い水準にある青森市の22年度の支給額は約3180万円(162件)で、前年度の2680万円(136件)より約500万円増えた。担当者は「支給額は右肩上がりで伸びている。全国的な傾向。困窮する高齢単身世帯の増加が背景とされている」と語る。

 弘前市では、扶助費は特段目立って増えていないが、故人に親族がいても引き取りを断られるケースが近年目立つという。

 青森市の葬祭業・八甲造花店の原子郁夫代表取締役は「最近は、身寄りのない生活保護受給者の葬儀が増えた印象がある。葬儀や火葬は、市役所担当者や友人ら、ごく少数の人によるお見送りになる」と語った。

 同市の葬祭業・平安閣リンクモアの船橋素幸社長は「コロナの影響で生活困窮者が多くなったことが葬祭扶助費増加の一因ではないか」とし、「老人ホーム施設長や民生委員が葬祭執行者となる事例が多くなった。少子高齢多死社会で葬祭扶助支給は今後も増加するだろう」と述べた。

 県の資料によると、県内で22年度に生活保護を受けた2万3182世帯(月平均)のうち、高齢者世帯は1万4826世帯(64%)。このうち92%の1万3689世帯が単身世帯。

 青森県では、受給世帯全体に占める高齢者世帯の割合が13年度に50%を超え、18年度以降は60%を上回っている。

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