「救命できた可能性を否定できない」 ワクチン接種後に女性が死亡 事故調の報告書に夫「誰か声を出していれば」

2022年11月、愛知県愛西市で新型コロナワクチンの接種を受けた女性が死亡した問題で、市が設置した事故調査委員会が26日に報告書を公表しました。

遺族の思いを取材しました。

(飯岡英治さん)
「妻がどれだけ苦しんで、生きたかったかわかる内容。なんで助けてくれなかったんだと」

事故調査委員会からの報告を受けて、26日夜に愛西市の飯岡英治さん(45)は、妻・綾乃さんの遺影を前に、涙ながらに語りました。

2022年11月5日、当時42歳だった綾乃さんは、愛西市の集団接種会場で新型コロナワクチンを接種した直後、体調が急変し死亡しました。

この時、重篤なアレルギー反応である「アナフィラキシー」への対応として、現場でアドレナリンが注射されなかったことから、夫の英治さんは「適切な対応がなかった」と主張。

愛西市は事故調査委員会を設置して、医師らの聞き取りなどを進めてきました。

そして26日…。

(飯岡英治さん)
「医療事故調査委員会が終わったら、市がどう対応するのか興味がある」

事故調査委員会は報告書を英治さんに説明し、その内容を公表しました。

(長尾能雅委員長)
「ワクチン接種後、極めて短時間に患者が急変し死亡に至った。アナフィラキシーが関与していた可能性が高い」

綾乃さんの直接の死因は「急性呼吸不全」と「急性循環不全」と考えられるとしたうえで、アナフィラキシーによって引き起こされた可能性が高いと結論づけました。

さらに…。

(長尾能雅委員長)
「特に早期にアドレナリンが投与された場合、救命できた可能性を否定できない」

そのうえで、医師がアナフィラキシーの可能性は低いと判断してアドレナリン注射を打たなかった対応は「標準的ではなかった」と判断しました。

「誰か1人声を出していれば…」

(Q:医療ミスによる医療事故なのか?)
「調査委員会では法的判断に踏み込んではいない。過失性、過誤感の判断は責任主体である愛西市が今後判断することではないか」

その愛西市の日永貴章市長は、事故調査委員会としての結論を受けて…。

(愛西市 日永貴章市長)
「(Q:市は医療ミスによる医療事故だと判断するのか?)現時点では私が報告書を受け取ったので、私自身はそのような判断をしかねる」

今回の事案が医療ミスによる医療事故かどうか明言せず、今後、市として結論を出す方針を示しています。

一方、現場での医師の対応について、当初は「適切だった」との認識を示していましたが…

(愛西市 日永貴章市長)
「(報告書を)真摯に受け止めなければならない」

こう話したうえで「市の代表として責任を感じている」と述べました。

事故調査委員会や市長の会見を聞いた英治さんは自宅に戻ると…。

(飯岡英治さん)
「やっと綾ちゃんが間違ってなかったってことが…、わかったよ」

綾乃さんに調査結果を報告しました。

(飯岡英治さん)
「何回か助けられたであろう場面があった。誰か1人声を出していれば…とか、何で間違えるんだ…とか。説明は聞いたけれど、彼女が戻ってくるわけではない」

愛西市の対応については…。

(飯岡英治さん)
「謝罪しないということは悪いと思っていないということ。そこまで腐っていないと思いたいので、愛西市の対応を待ちたい」

夫の英治さんは今後の市の対応次第では弁護士と相談し、民事訴訟も検討するということです。

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