お風呂で激痛、止まらない涙…全身に水疱ができる指定難病「表皮水疱症」と闘いながら生きる少年の日常に密着

一般の人にとっては、お風呂は気持ちがいいものですが、痛みに耐え、泣きながら入らなければならない少年がいます。国の指定難病の一つ「表皮水疱症」のため、全身の皮膚にわずかな刺激でただれや水疱が生じるからです。それでも明るく生きる少年の日常に密着しました。

全国に約1000人、全身にただれや水ぶくれができる難病「表皮水疱症」

三重県津市に住む田邉柊くん(6歳)は、両親と小学2年の兄・凌空くんの4人家族。外で遊ぶのが大好きな少年です。いつも笑顔の柊くんですが、生まれてからずっと国が指定する難病「表皮水疱症」と闘っています。

(母親・田邉光希さん)
「表皮水疱症という病気。少しの刺激で皮膚がめくれたり、水ぶくれができる」

表皮水疱症は皮膚の構成に必要なタンパク質の異常で、わずかな刺激でも全身に水疱ができたり、ただれが生じたりする国指定の難病です。患者の数は全国で約1000人、根本的な治療法はまだ見つかっていません。

(父親・田邉昂秀さん)
「生まれた時は…いまの病気という感覚は全くなくて、出血が足についているくらいだと思っていた。この子の顔を見るたびに頑張っているなと思うので、応援しながらもその反面、自分たちはどうしていったらいいんかなと」

柊くんの症状は全身の皮膚にかゆみが出るほか、手足の指の癒着や変形もあります。皮膚を保護するため、抗菌処理がされている専用のシートを全身に巻いて生活しているのです。

(母親・田邉光希さん)
「中はスポンジになってるんですけど、これは皮膚がめくれてうんできたりとか、滲出液が出てきた所にサイズに合わせて切って貼る保護材」

柊くんは生まれたときからずっと、この病気とつきあってきました。

激痛を伴うお風呂の時間…母が語った病気の認知度の低さ

柊くんが一番苦手なのは、お風呂。入る前から泣き出してしまいます。訪問看護師が来る週2回、入浴します。湯をかけながら、柊くんの全身を保護していたシートを剥がしていく作業が痛いのです。

少し前から、真水よりは肌に染みにくい生理食塩水を“かけ湯”に使っていますが、それでも柊くんの涙は止まりません。肌をきれいに保つために欠かせないお風呂ですが、柊くんにとっては痛身を伴う時間なのです。

お風呂からあがると全身に保湿剤とかゆみ止めを塗り、抗菌シートを巻きます。水疱ができていれば、針で一つずつ潰す作業も欠かせません。包帯を巻き直す時間も含めて、お風呂に約1時間かかるのです。

(母親・田邉光希さん)
「買い物に行くたびに『どうしたの?』『転んだの?』『けがしたの?』と言われて。皮膚の病気と説明することが結構あって…こういう皮膚の病気があるということが、知られていないんだなと思って。こういう皮膚の病気の子もいるということがもっともっと広まれば、そうやって言われなくなると思う」

「こども園が楽しい」看護師常駐のこども園での様子とは

柊くんは現在、津市内のこども園に通っています。この日は足が痛く、靴を履く時は先生や友達に手伝ってもらいました。椅子に座って、仲間の輪に入ります。

(担任・渥美卓美先生)
「足の裏が痛いみたいで。いつも廊下も歩いてきて、階段も自分で降りるんですけど、きょうは車の中から痛かったみたい」

外で遊ぶ時間になると、座って楽しめるブランコを選びました。友達はみんな柊くんの身体を気遣いながらも、仲良く過ごしています。

(田邉柊くん)
「(Qこども園は楽しい?)楽しい。(Q何が一番楽しい?)外で遊ぶのが楽しい」

津市内に6つある公立のこども園には、看護師が常駐しているため、柊くんの両親も安心して預けることができています。園には、柊くんの皮膚をケアするシートや水疱を潰す針もあります。

給食の時間も、気が抜けません。水疱は体の表面だけでなく口の中にもできるため、口の中を傷つけないよう、先生に食べ物を一口サイズに切ってもらいます。また、一度にたくさん食べられず、食事だけでは十分な栄養が摂れないので、栄養剤も欠かせないのです。

(母親・田邉光希さん)
「鉄剤とビタミン剤。どうしても出血が多くなって鉄分不足になってしまう。余分に混ぜてとらないと、貧血になってしまう。1日3缶は飲みます」

一番嫌いだったお風呂も少しずつ克服!少しずつ成長していく柊くん

2023年9月、この日は夏休み明けの登園初日でしたが、柊くんはぐったりしていました。真夏でも全身に包帯を巻いて過ごしているため、体に熱がこもりやすく、冬よりも夏が苦手なのです。今年の暑さは特に体にこたえました。

一方で、痛くて苦手だったお風呂は、「生理食塩水」に慣れてきて少しずつ好きになってきたといいます。

(母親・田邉光希さん)
「だんだん痛くないというのが分かってきて、泣かなくなった」

今までは湯船に浸かることができませんでしたが、お湯に腰まで浸かることができるように。お風呂から上がった後も、以前は泣いていましたが、今は楽しくおしゃべりできるまでになりました。

毎日、少しずつ成長していく柊くん。家族やこども園の先生、友達など多くの人に支えられて今日も元気に過ごしています。

CBCテレビ「チャント!」9月19日放送より

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