白神山地の麓「深谷のクリ」豊作、収穫盛ん 青森・鯵ケ沢町

熟れて地面に落ちたイガグリ。つややかな実が顔をのぞかせた=27日朝、鯵ケ沢町深谷地区

 「ガサッ」。熟れたクリがイガごと木から落ちる音が静寂の森に時折響く。白神山地の麓・青森県鯵ケ沢町の深谷地区では、9月下旬ごろから、名産の「深谷のクリ」の収穫が連日盛んに行われている。

 27日、元町内会長の滝吉和俊さん(78)と光子さん(72)夫妻は、クマよけのために花火を打ち上げたり、一斗缶をたたいたりしながら、早朝からクリの収穫に励んでいた。

 和俊さんによると、昨年は1本の木になる実が少なく不作だったが、今年は一転して豊作。収穫は10月末まで続くという。

 約4ヘクタールある地区のクリ林は、約50年前から、リンゴの木を切って植えられてきたものだが、白神山地にはクリが自生し、動物や人間が古くからその恩恵を受けてきた。

 今年は地区の4世帯7人がクリの収穫に携わっているが、道路整備の計画に伴い、滝吉さん夫妻は、来年8月末までに自宅から立ち退き、地区を離れる予定。本格的に収穫に携わるのは、今年が最後になりそうだ。

 町は11月5日に深谷のクリを使った「スイーツフェス」を開催する。和俊さんは「暑い日が多かったから、今年のクリはおいしいはず。ぜひフェスで味わってみて」と話していた。

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