【プジョー・リフター・ロング試乗記】ボディサイズを忘れかけるコンパクトな乗り味。レーシーな小径ステアリングも光る

『プジョー・リフター・ロングGT』。この名前を聞いて、その顔や体躯を思い浮かべられる者が何人いるだろうか。意外なことに、遠出をすれば1日に1台は見たりするモデルなのだが、それでもまだ身近なクルマとは言い切れないかもしれない。

 今回は、そんな7人乗り5ドアハッチバックモデルであるプジョー・リフター・ロングGTを8月某日のレース取材時で乗る機会に恵まれたので、クルマの詳細や、実際に乗ってみた感想を伝えたい。

 このリフター・ロングGTは、同系モデルの『プジョー・リフターGT』のロングバージョンという位置づけのクルマだ。リフターロングGTの全長は4760mm、全幅は1850mm、全高は1900mm、ホイールベースは2975mm。

 この数値はリフターGTより全長は355mm伸び、全高は20mm高く、ホイールベースは190mm延長されているが、全幅は同じとなっている。

2975mmのロングホイールベースは直進安定性の向上にもつながる
車体は“ロング”になっているがワイドにはなっていない

 この大きなボディに搭載されるエンジンは、1.5リッターのターボチャージャー付直列4気筒DOHCディーゼルエンジン。最高出力は130ps/3750rpm、最大トルクは300Nm/1750rpmと、スムーズに走るには過不足ない力を持つ。

プジョー・リフターロングGTに搭載される1.5リッターターボチャージャー付直列4気筒DOHCディーゼルエンジン

 このダウンサイジングターボエンジンの搭載により、車両重量は1700kgに抑えられ、室内空間の拡大にも繋がっている。次はその室内に目を向けてみよう。

 ドアを開けると、目に飛び込んできたのはお洒落なシートだ。洗練されたチェック模様とグレーのフェルトらしい生地に、小気味よい白のステッチが入った知的な印象のシートは、座り心地も程よく落ち着いている。

瀟洒なシートは適度なホールド性も備える形状となる

 いざ乗り込むと、黒を基調とした内装と、思いのほか小さく縦の径を抑えられたレーシーなステアリングが見える。その細やかなステアリングのおかげで、ドライバーの足元も余裕が生まれる。

グリップの形状も握りやすく整えられている

 後部座席は、同じデザインのシートが3脚並ぶ。同行した者によると、こちらは少し足元が狭く感じたとのことだ。その理由は、そのさらに後部の空間の確保によるものだと思われる。

3脚のシートが並ぶ後部座席

 最後部にはさらに2脚のシートがあるが、それらを畳むとかなり広い収納スペースが生まれる。2リットルのペットボトルを置いても、この余裕である。畳んだシートを起こしたとしても、十分に使用できる収納が残りそうなことから、シート配置の前後感覚も熟慮された結果なのではなかろうか。

プジョー・リフターロングGTの広大な荷室

 肝心の走りはというと、大きなボディサイズを忘れかけるほどのコンパクトな乗り味に仕上がっていた。その秘密を突き詰めることは難しいが、ボディ骨格の硬すぎない剛性と、フロントがマクファーソンストラット式、リヤがトーションビーム式の足回りの衝撃吸収バランスがしなやかに仕事をしていると感じた。

 使用しているタイヤは、グッドイヤーのエフィシェントグリップ。サイズは215/60R17と、トレッドは気持ち細めだがハイトがあり、今どきのクルマにしては小径にも思える17インチのアロイホイールと組み合わされる。このタイヤのたわみを利用するサイズバランスも、自然で軽快なドライブフィールに一枚噛んでいるだろう。

プジョー・リフターロングGTは215/60R17サイズのタイヤを履く

 今回は悪路や雨のなかを走ることはなかったため、電子制御等の性能に触れることはほとんどなかった。それでも1700kgに抑えられた車重とバランスの取れたエンジンのバランス、柔軟な路面追従性を持つ足回りと直感的なドライブフィールは、大きなボディを引きずることなくその車体を意のままに操ることのできる仕上がりになっていた。

ステアリングの裏にはクルーズコントロール専用のユニットもついている
プジョー・リフターロングGTのシャシーイメージ

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