【シンガポール】11億Sドル規模の支援策導入[経済] 低中所得層向け、生活費負担減へ

ローレンス・ウォン副首相兼財務相は、物価高で国民の生活費負担が増していることを受け、11億Sドル規模の支援策を導入すると発表した=シンガポール中心部(NNA撮影)

シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は28日、物価高で国民の生活費負担が増していることを受け、11億Sドル(約1,200億円)規模の支援策を導入すると発表した。低中所得層を中心に、一時金の現金支給や飲食店などで使えるバウチャーの追加配布、公共交通運賃の助成金付与といった施策を打つ。今年2月の2023年度(23年4月~24年3月)予算案発表時に盛り込んだ国民支援策とは別の新たな物価高対策となる。

新たな支援策の名称は「コストオブリビング・サポート・パッケージ」。既存の国民救済措置「アシュアランス・パッケージ」の拡充分が含まれる。物価高はピークを過ぎたとみられているが家庭への影響は続いているため、政府は支援策を追加導入し、低中所得世帯を中心に国民の負担を軽減する施策を強化する。

アシュアランス・パッケージには追加で8億Sドルを投じる。これにより同パッケージの支援規模は計100億Sドルを超える。今年12月には、同パッケージの下で既存の助成金に上乗せする形で、成人の国民250万人を対象に1人当たり最大200Sドルの一時金を現金で支給する。

支援対象者は12月に最大800Sドルを受け取る。具体的には、24年に21歳以上となった国民で所有不動産がゼロか1件、かつ賦課年度当たりの収入が3万4,000Sドル以下の場合、既存の助成金600Sドルに加え、今回発表した一時金200Sドルの計800Sドルが受給額となる。

収入が3万4,000Sドルよりも多く10万Sドル以下の場合は、既存分が350Sドル、今回の一時金が150Sドルの計500Sドル。収入が10万Sドル超の場合は既存分200Sドルの支援だけで一時金の支給はない。所有不動産数が2件以上の国民も既存分200Sドルだけとなる。

飲食店などで利用できる「コミュニティー開発協議会(CDC)バウチャー」は、24年に全世帯を対象に1世帯当たり200Sドルを追加支給する。同年に分配するCDCバウチャーは既存分と合わせて1世帯当たり計500Sドル分となる。

追加で支給する200Sドルのバウチャーのうち、100Sドルは住宅街やホーカーセンター(屋台街)の加盟店、残りの100Sドルはスーパーマーケットの加盟店でそれぞれ利用できる。バウチャーの受給申請は24年1月3日から政府の専用サイトで受け付ける。使用期限は24年末だ。

■修繕維持費の補助なども増額

公共交通機関では、運賃上昇に合わせて24年に約3億Sドル規模の助成金を新たに支給する。運輸省の公共輸送審議会(PTC)は今月18日、公共交通機関の運賃を引き上げると発表。12月23日から従来比で最大7%の値上げが実施される。助成金支給で国民の負担減につなげる。

年内には公共交通バウチャーも発行。世帯人員1人当たりの月収が1,600Sドル以下の場合、1世帯につき50Sドルを支給する。

公営住宅(HDBフラット)の修繕維持費の支払い支援や、公共料金の負担を軽減する「Uセーブ・リベート」政策でもリベート(払い戻し)額を増やす。

足元では、市民の生活に欠かせないサービス、物品の価格が上昇基調にある。持続可能性・環境省は27日、水道料金を24年4月1日から2段階に分けて引き上げると発表した。

ウォン副首相兼財務相は今回発表した支援策について、「国民の多くは経済の先行きや物価高に不安を感じているため、政府は国民への支援策を強化する」と述べた。

政府は今年に入り、行政サービス手数料の引き上げを見送るなどの物価高対策を取っているとも説明。ただコスト高の影響で自治体関連の手数料などが上昇しており、「今回発表した11億Sドル規模の支援策を通じて、低中所得世帯を中心に国民を救済したい」と付け加えた。

リー・シェンロン首相は8月の施政方針演説(ナショナルデー・ラリー)で、国民向け支援策を拡充する意向を表明。ウォン副首相兼財務相によると、同演説を受けて財務省が追加支援策の策定作業を進めていた。

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