富山・大沢野でクマに襲われ70代男性負傷 アユ釣り中、命に別条なし

アユ釣りをしていた男性がクマに襲われた富山市下夕林の現場周辺=28日午後

 28日午前11時20分ごろ、富山市下夕林(大沢野)の神通川でアユ釣りをしていた男性(71)がツキノワグマに襲われ、左腕と左肩に全治1カ月の重傷を負った。富山南署によると男性は病院に運ばれたが、命に別条はないという。クマは成獣とみられ、そのまま逃げた。県自然保護課によるとクマによる人身被害は県内で今年2例目。県は被害を受け、今年初のツキノワグマ出没警報を出した。

 男性が助けを求めて訪れた同市長附(大沢野)のおとりアユ店「ふなさきオトリ店」によると、襲われたのは愛知県の男性で、兄と一緒に来ていたという。

 同店などによると、男性が神通川左岸側の川の中で兄と並んで釣りをしていたところ、右岸側にクマが現れた。追い払おうと大声を出すと近づいてきたため、石を投げようとした時に左肘をかまれた。左肩も引っかかれたという。

 男性と兄はそれぞれ乗っていた車を運転して1キロ以上離れた同店に行って助けを求め、午前11時50分ごろに同店が110番した。

 現場は大沢野大橋から上流に約1キロで、旧小羽小学校から東に約300メートルの地点。川の両側に木々が生い茂り、付近に民家がある。市農地林務課によると、市職員と地元猟友会のメンバーが現地を調査したが、ふんや足跡といった痕跡は見つからなかったという。

 市は夕方に現場周辺でパトロールを実施。29日の朝夕も引き続き、見回りを行う。富山南署もパトカーで住民に注意を呼びかけた。

 県内では8月12日、富山市有峰(大山)の折立登山口で登山客の30代男性がクマに襲われ軽傷を負った。

ドングリ不作、クマ大量出没警戒 専門家

 今年はクマの餌となる山中のドングリが県内全域で不作のため、専門家や県は注意を呼びかけている。クマの生態に詳しい「県自然博物園ねいの里」の赤座久明さんは、クマが食べ物を探しに人里に現れる危険性が高まっていると言い「今秋は数年に一度の大量出没が起きる可能性もある」と警戒する。

 県森林研究所の8月の調査によると、ブナ、ミズナラ、コナラの3種類はいずれも県全域で「不作」で、県東部のブナについては最も悪い「凶作」だった。赤座さんはクマとの遭遇を避けるため、クマを引き寄せるカキやクリの実を取り除き、木を伐採するように求める。クマが身を隠しやすい草木を刈り取ることも有効だと説明する。

 28日に男性が襲われた現場から数百メートル離れた富山市春日(大沢野)で27日にクマの成獣1頭が目撃されており「同じ個体であってもおかしくない」と語った。

 富山市によると、1月から9月28日までのクマ出没件数は58件で、昨年1~9月末よりも12件多い。

クマの人身被害があった現場周辺=28日午後2時、富山市内

© 株式会社北日本新聞社