社説:大学の将来像 看過できない定員割れ

 大学の入学者数の減少が続く中、2040年を見据えた高等教育機関の将来像について盛山正仁文部科学相が中教審に諮問した。

 大学の統合・再編の促進や定員規模の是正に向けた方策を探るのが狙いだ。

 18歳人口が大幅に減っており、「大学過剰時代」は避けられない。道筋を付けなければ手遅れになる。

 文部科学省の推計によると、40年の大学入学者数は22年に比べ12万人少ない51万人。現在の総入学定員62万6千人を維持すれば、充足率は約8割に落ち込む。

 定員割れは経営悪化に直結し、経営破綻や撤退する大学が増えるのは必至だろう。四年制私大は今春、過半数が定員割れした。地方の小規模大学ほど深刻だ。

 中教審は18年にも国公立大の統合や私立大間の学部譲渡の促進といった改革を答申した。だが、大学側の動きは鈍かった。一方で、多数の学部の新増設などを認めてきた文科省も責任を免れない。

 中教審は25年3月をめどに答申する。教育研究の質向上や国公私別の役割分担、デジタル化や脱炭素といった時代の変化に応じた人材育成など課題は多い。

 ただ大学の存在意義や開学精神がないがしろにされないかとの懸念もある。効率重視でなく、場合によっては異論を唱えてほしい。

 とりわけ地方の若者の教育機会を奪ってはならない。中には地域活性化の核を担っている大学もある。進学時の若者流出が地方の疲弊につながっており、大学の公共性にも十分配慮せねばならない。

 京都は大学と地域の将来像を独自に模索する「大学コンソーシアム京都」を擁する。複数校が協力して各自の持ち味を生かしたグループ運営ができる大学等連携推進法人制度などを拡充し、魅力向上策を探ってもらいたい。

 社会人の「学び直し」の受け入れも重要だ。仕事を離れて大学に戻ることや高齢者の生涯学習なども含め、誰でも、いつでも、どこでも学べる環境整備を急ぎたい。

 海外からの留学生比率は学生全体の約3%で、先進7カ国平均の8%を大きく下回っている。留学生を増やすには教育研究の質向上が前提となる。

 人口減少社会は既に到来しており、どう対応するか。大学は真剣に向き合わねばならない。

 国も「選択と集中」を名目に成果の見えやすい研究に投資するだけでなく、幅広い基礎研究や地域社会に貢献する大学づくりを支援すべきだ。

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